改訂新版 世界大百科事典 「湿潤剤」の意味・わかりやすい解説
湿潤剤 (しつじゅんざい)
wetting agent
固液両相が接する場合に,その界面張力を変化させ,両者のぬれ(湿潤)の特性を大きく改善するために用いられるものを湿潤剤といい,広く工業の各分野で利用されている。湿潤剤は界面活性剤の一つであるが,とくに固液界面に対する配向性の大きいもので,系の極性に応じて適当な構造のものが選ばれる。一般に湿潤は,(1)固体表面に液体が接触し,これがぬれ広がるようにする拡張湿潤,(2)固体表面に付着した液相を界面から取り去っていく付着湿潤,(3)固相細孔中に液体が浸透していく浸漬湿潤,に分類される。そして固液両相の接触角θが180度より小さくなるようならば付着湿潤が,90度より小さい場合は浸漬湿潤が,またθ=0の場合は拡張湿潤が起こる。応用分野としては,繊維工業での漂白,染色工程,マーセリゼーション工程での均一性の向上に,紙・パルプ工業では紙のサイジングや吸水性向上用に使用され,農薬(粉剤,乳剤)の展着剤,塗料・インキ工業での顔料分散剤としても用いられる。そのほか建材の混和,浮遊選鉱等,その用途に応じてさまざまな湿潤剤が用いられる。一例をあげると,塗料・インキ工業での顔料分散用には,水系の場合はアルキルナフタレンスルホン酸ソーダ,アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ,アルキルアリルエーテル(HLB10以下),ジエタノールアミンなどが,また油系ではアルキルナフタレンスルホン酸ソーダ,アルキル硫酸塩,金属セッケン,脂肪族アミン,アルキルアリルエーテル(HLB10以上)などが使用されている。なお液体を繊維や紙などに浸透させるために用いる助剤を浸透剤ということがあるが,実用上は湿潤剤と同じものである。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報