デジタル大辞泉
「漂」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ただよ・う ただよふ【漂】
〘自ワ五(ハ四)〙
①
空中、水面などに浮かんでゆらゆらと動いている。ゆれ動いて一つ所に定まらない。
※古事記(712)上「国稚(わか)く浮きし脂の如くして、久羅下那州(くらげなす)多陀用弊(タダヨヘ)る時」
※落梅集(1901)〈
島崎藤村〉舟路「
大空に雲は飄
(タダヨ)ひ 潮分けて舟は行くなり」
② 迷い歩く。ふらふらとさまよう。うろうろする。
※
源氏(1001‐14頃)
帚木「なまうかびにては、かへりて、悪しき道にも、ただよひぬべくぞ」
③ たよりなく生きる。よるべない生活をおくる。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「うち捨ててん後の世に、ただよ
ひさすらへんこと」
④ 安定しないで、ふわふわしている。落ち着かないでふらふらする。よろめく。
※源氏(1001‐14頃)
常夏「青き色紙ひとかさねに、いと草
(さう)がちに、怒れる手の、そのすぢとも見えず、ただよひたる書きざま」
※
日葡辞書(1603‐04)「アシガ tadayôte
(タダヨウテ) ユク」
⑤ ひるむ。たじたじとなる。
※太平記(14C後)二六「少も漂(タダヨ)ふ気色無して、大音声を揚て」
ただよわ・す ただよはす【漂】
〘他サ四〙
① ただようようにする。落ち着かない
状態にする。よるべなくさせる。
※
書紀(720)斉明六年一〇月(北野本訓)「我が蝥賊
(あしきあた)を率て来て我が疆場
(さかひ)を
蕩揺(タタヨハシ)」
※
今昔(1120頃か)二四「何
(いづ)ちとも无くて被漂
(ただよはされ)たる船出来たり」
② 表情や雰囲気などに表わす。
※後裔の街(1946‐47)〈
金達寿〉四「妙な
微笑を顔に漂わして」
ただよわし ただよはし【漂】
〘形シク〙 (動詞「ただよう」の
形容詞化した語) ただよっているようである。しっかりと定まらない。落ち着かない。たよりなさそうである。
※源氏(1001‐14頃)
玉鬘「ただ、心の筋を、ただよはしからず、もてしづめおきて」
ただよわし‐げ
〘形動〙
ただよわし‐さ
〘名〙
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報