コンピュータの構成要素のなかで、数値に対する計算などの処理を行う部分をいう。コンピュータは演算装置のほかに制御装置、入力装置、出力装置、記憶装置などから構成され、演算装置内にはすべての演算処理の中心となる主レジスターが存在する。このレジスターを累算器(アキュムレーター)という。レジスターとは一つの数値を置いておくことのできる置数器のことである。
[石井 博]
累算器では各種の演算が行われる。演算としては、加算、減算、乗算、除算の四則演算、論理積(アンドAND)、論理和(オアOR)、否定(ノットNOT)の論理演算(ビット演算ともいう)などがある。これらの演算を1桁(けた)ごとに順に行う方式を直列演算という。また、ある長さの桁を一つの数値として、全桁同時に行う方式を並列演算というが、ハードウェアコストが低くなったため、速度の劣る直列演算はほとんど用いられていない。計算機内では二進法が用いられるが、二進法1桁分の加算を行う回路を加算器という。加算器は下位桁からの桁上げを処理する全加算器と、処理しない半加算器とがあり、半加算器を二つ組み合わせて全加算器とすることができる。これらの加算器は、さらに基本的な論理積回路、論理和回路、および否定回路を組み合わせてつくることができる。
これらの基本的な論理回路をいくつかまとめて小規模集積回路(SSI)がつくられた。また加算器や、比較を行うコンパレーター、コード変換を行うデコーダー、エンコーダーなどは中規模から大規模の集積回路として利用できる。こうして一つの累算器を中心にした四則演算、論理演算を行う回路で配する構成が広くとられている。また演算装置は、一つだけの累算器ではなく、多数(8~16個が多い)の累算器を用いてプログラマーが有効に使い分ける構造が多くなっている。この場合レジスターは累算器としての機能のほかに、インデックスレジスターとしても使えるようになっており、汎用(はんよう)レジスターともよばれる。インデックスレジスターとは、機械語命令の番地部で指示されている番地に修飾を行うレジスターである。インデックスレジスターによる番地修飾機能は、制御装置の機能でもある。汎用レジスターの考え方が示すように、演算装置と制御装置の境界ははっきりしたものではない。
[石井 博]
演算装置と制御装置をあわせて中央処理装置またはCPU(central processing unitの略称)とよんでいる。最近の大規模集積回路(LSI)や超大規模集積回路(超LSI)では、この中央処理装置を数ミリメートル角のシリコンチップ上に収めることができる。これらをマイクロプロセッサー、あるいはマイクロコンピュータなどともいう。一方、大型コンピュータにおいては、逆に一つのまとまった演算装置を、より細かい加算ユニット、乗算ユニットなどの独立なユニットに分割し、制御装置がそれらを複雑に組み合わせて処理の進行を図る構造になっている。この場合、制御装置は演算装置内の空いているユニットを利用して、まえもって処理できるものがある場合には、最大限先取りして処理を進めることができる。この制御法を先回り制御、あるいはパイプライン制御とよんでいる。パイプライン制御は流れ作業と同様の考え方で、コンピュータの命令の実行を流れ作業化することにより処理速度が高められ、大型コンピュータの性能を左右する重要な技術となっている。
[石井 博]
このほか、大型コンピュータでは処理能力を高めるため、強力な演算機能が追加されている。代表的なものとして、浮動小数点演算と十進演算とがある。コンピュータで標準的に扱われる数は整数である。しかし、科学技術計算では実数計算が中心となる。このため、数値を有効数字と位取りとに分けて記録する浮動小数点表現を用い、実数の加減乗除算を行うようになっている。浮動小数点数の処理は、中・小型のコンピュータではソフトウェアによっているが、複雑な実数計算を必要とする科学技術計算の場合は、処理効率があがらないため、大型機では浮動小数点数の処理をハードウェア化して演算装置内に設けてある。十進演算は事務処理のために用いられる。計算機の整数演算や浮動小数点演算能力は、速く強力であるが、一方事務処理分野ではそれほど複雑な計算は必要とせず、内部表現の数を印刷出力用に編集したりするほうが比重が大となる。このような場合、数は十進数のまま扱えるほうがよい。このため内部十進表現が考え出され、その処理装置が演算装置内に設けられるようになった。この処理は十進数演算のほかにも数字の編集や変換などの機能が含まれ、事務処理用機能といわれている。事務処理用機能も大型機では標準化されているが、中・小型機では自由となっている場合が多い。演算装置はこうしたさまざまなデータ処理を実行する装置によって構成されている。
[石井 博]
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