演色(読み)えんしょく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「演色」の意味・わかりやすい解説

演色
えんしょく

照明による物の色の見え方をいう。また、色の見え方を決める照明光の性質演色性という。色彩学では演色評価数(以下Raで表す)によって演色性の良否を決める。ある照明光に対して、それと等しい光色の基準光のRaを100とし、これと比較する形でその光のRaを決める。Raとは、定められた8種類の試験色に対する8個の演色評価数の平均値である平均演色評価数General Colour Rendering Indexの量記号である。光源の平均演色評価数Raは、相関色温度の近似する光源どうしの相対評価値であり、基準光と比較した演色の忠実さを示す数値である。

 JIS(ジス)(日本工業規格)の屋内照明基準総則では、色が重要な作業、診察室、化粧室、美術館の絵画などにはRa90以上を、住宅の居間、事務室、教室、デパートなどにはRa80以上を、電気室、機械室、倉庫などにはRa60以上を、階段、廊下などにはRa40以上を、それぞれ推奨している。基準光はいろいろの色温度をもった黒体、またはCIE昼光(国際照明委員会が定めた自然の昼光を代表する測色用基準の光で、分光分布で示される)である。

 一般照明用の普通形蛍光灯白色、昼光色、温白色など)のRaは60~77で、日常生活に差し支えない演色性である。3波長域発光形蛍光灯、Hf蛍光灯(High Frequency Fluorescent Lamp Luminairesの略で、高周波点灯専用形蛍光灯のこと)およびコンパクト形蛍光灯のRaは84~88で優れた演色性である。色を観察する照明には、SDLとかEDLという記号のついた高演色性の蛍光灯がよく使われるが、それらのRaは87、98と高い。電球光のRaは100で、申し分ない演色性である。電球形蛍光ランプのRaは84、LED(Light Emitting Diode=発光ダイオードの略)電球は70~80である。

 トンネル照明などに使われるナトリウムランプは、明るいけれども演色性はきわめて悪く、Raを計算すると大きなマイナスになる。この光では青や赤が灰色または黒に見えるので、標識の色がわからなくなるとして問題になった。理由は、その光が単色の線スペクトルだけからなっていることによる。それに対して、高圧ナトリウムランプは、Raが28と改善され、工場照明などに有効に使われる。水銀ランプの光は特別なスペクトル成分をもっているが、なかには演色性の悪い種類もある。

 店舗ダウンライトや局部的なスポットライトに使用される小形の高演色性メタルハライドランプのRaは85~92、サッカー場や野球場の投光照明用の白色のメタルハライドランプのRaは94である。

[東 尭・高橋貞雄]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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