漢・魏・晋・南北朝の美術(読み)かん・ぎ・しん・なんぼくちょうのびじゅつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

漢・魏・晋・南北朝の美術
かん・ぎ・しん・なんぼくちょうのびじゅつ

前漢の高祖の王朝樹立 (前 202) から新,後漢,三国 (魏,呉,蜀) の鼎立,さらに西晋,東晋を経て宋,斉,梁,陳などの南朝の王朝が江南でめまぐるしく交代して胡族による北朝と対立し,やがて 581年,隋により統一されるまでの約 700年間を対象とする美術。漢の四方経略の結果,東西文化の交流が活発となり,造形美術も国際性を増したが,後漢の初めの仏教伝来端緒として,輸入の漸増したインド・西域美術は中国美術に著大な影響を与えた。絵画では,進展の著しかった書の筆法が取り入れられて,魏・晋・南北朝期の描線中心の絵画,ことに道釈人物画の高揚となり,中国絵画の伝統形式の一つを確立することになった。この時代の代表画家顧 愷之の伝称作品『女史箴図巻』 (大英博物館) がこれを示し,第2次世界大戦後発見された多くの墳墓壁画もそれを傍証する。彫刻では漢の墳墓副葬の明器に高い彫塑性が認められるが,これらの造形性はやがて仏教彫刻 (石造,金銅造) として結実した。北魏,北周,北斉など,主として北朝治下につくられた雲崗その他の石窟寺院彫刻がそれを示している。他方,金銅の装身具馬具鏡鑑などは卓越した意匠巧緻技法をみせ,同時に陶磁器,染織品などもこの時代の美術の質的な高さを実証する。

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