火番(読み)ひのばん

精選版 日本国語大辞典 「火番」の意味・読み・例文・類語

ひ‐の‐ばん【火番】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 火災予防警戒をすること。また、その人。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「鑰を盗み出して鎖(じゃう)あくる音、火(ヒ)の番(バン)太鼓にあはせて、扨もすかぬ事也」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)六)
  3. 江戸幕府の職名。
    1. (イ) 目付もしくは留守居の支配に属し、江戸城内の火災の警戒に当たる職。表・奥の別があり、組頭が指揮した。西の丸・二の丸にも置かれた。
      1. [初出の実例]「火之番、御門番之面々、方角違候火事には、自分は不申」(出典:御触書寛保集成‐二六・元祿一二年(1699)九月)
    2. (ロ) 大奥女中職の一つ。大奥の火災の予防に任じたもの。
      1. [初出の実例]「御仲居拾人 火之番弐拾壱人」(出典:御老女衆記‐大奥女中分限(古事類苑・官位五四))
    3. (ハ) 幕府所管の浅草御蔵、本所御蔵をはじめ、聖堂、東叡山(寛永寺)、増上寺、紅葉山その他大手方・桜田方などの火災の警戒をつかさどったもの。所所火之番と総称され、またその場所の名が付され、浅草御蔵火之番、増上寺火之番、大手方火之番などとも呼ばれた。紅葉山火之番が寺社奉行支配にあったように、その建物などを管轄するものの支配に属した。
      1. [初出の実例]「浅草本所御蔵、猿江御材木蔵、火之番向後御差止相成」(出典:徳川禁令考‐前集・第三・巻二九・文久二年(1862)七月)
  4. 江戸時代、譜代大名を中心に課せられた課役の一つ。本丸・二の丸・西の丸・吹上御物見・御鷹部屋・紅葉山惣御仏殿・本所御材木蔵・大手組防場・桜田組防場などの火災の予防の任をつかさどる。大名火番。方角火消役。
    1. [初出の実例]「隠岐守様火之御番被仰付候由」(出典:菅外記宛芭蕉書簡‐元祿二年(1689)冬)

こ‐ばん【火番・火伴】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「こ」は「火」の唐宋音 ) 禅家で、火を管理する役の者。禅寺下男寺男(てらおとこ)。転じて、在家でも下男を称した。〔文明本節用集(室町中)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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