日本大百科全書(ニッポニカ) 「無議決権株式」の意味・わかりやすい解説
無議決権株式
むぎけつけんかぶしき
会社法上、定款の規定で、いっさいの議決権を有しないものとされた株式。種類株式の一種。完全無議決権株式ともいう。これは、議決権の行使にはあまり関心をもたない株主側の要求、議決権数が増えて会社経営に口を出す株主を少なくしたいという会社側の要求の双方を反映した制度である。2001年(平成13)11月の商法改正以前には、会社が種類株式を発行する場合に、利益配当についての優先株だけを無議決権株式とすることができた(旧商法242条)。しかも、無議決権株式はいっさいの議決権が排除される株式であった。しかし、利益配当優先株式以外にも無議決権株式を発行したいという要求、および、議決権を完全に排除する株式だけではなく、議決権の一部を排除した株式も発行したいという要求があった。これらを踏まえ、2001年11月の商法改正により、利益配当優先株式ではなくても議決権を排除する株式を発行することができるようになり、かつ、完全無議決権株式のみならず一定の事項について議決権が排除される議決権制限株式を発行できるようになった。2005年制定の会社法においても同趣旨の規定が存在している。すなわち、会社は種類株式の一種として、株主総会の全部または一部の事項について議決権を行使することができない株式を発行することができる(会社法108条1項3号)。
[戸田修三・福原紀彦]
『都井清史著『中小企業のための種類株式の活用法――会社法で変わる事業承継対策』(2008・金融財政事情研究会、きんざい発売)』