日本大百科全書(ニッポニカ) 「議決権制限株式」の意味・わかりやすい解説
議決権制限株式
ぎけつけんせいげんかぶしき
株主総会の全部または一部の事項について議決権を行使することができない株式(会社法108条1項3号)。会社経営に興味はなく、ただリターンにのみ関心がある株主側の要求、および株主の議決権数を増やしたくないという経営者側の要求に応じる。2001年(平成13)11月の商法改正以前は利益配当優先株式に限って、定款の規定で議決権を有しないものとされた無議決権株式(議決権なき株式ともいう)を発行することが認められていたが、商法改正以来、株式の種類を問わずに、かつ、無議決権だけではなく一部の事項について議決権を行使できない議決権制限株式をも発行できるようになった。発行するには、発行可能種類株式総数と議決権行使の事項・条件を定款で定める必要がある(同法108条2項3号)。この種類株式の株主は、議決権が制限される事項について、その議決権の存在を前提とする権利を有しないが、それ以外の権利は認められる。たとえば、役員選任決議に参加できない議決権制限株式を保有する株主は、役員選任決議を行う定時株主総会への出席権・招集通知受領権はないが、他社との合併を承認するために行われる臨時株主総会への出席権・招集通知受領権は有する。なお、公開会社では(全部株式譲渡制限会社以外の会社)では、議決権制限株式の総数は発行済株式総数の2分の1を超えてはならない(同法115条)。あまりにも少数の者による会社の支配は望ましくないからである。
[福原紀彦]
『都井清史著『中小企業のための種類株式の活用法――会社法で変わる事業承継対策』(2008・金融財政事情研究会、きんざい発売)』