熟成肉(読み)ジュクセイニク

デジタル大辞泉 「熟成肉」の意味・読み・例文・類語

じゅくせい‐にく【熟成肉】

うまみを凝縮させるために一定期間貯蔵させた肉。製造方法として、風を当てて乾燥させるドライエージングと、真空包装して貯蔵するウエットエージングがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熟成肉」の意味・わかりやすい解説

熟成肉
じゅくせいにく

生肉を腐敗させることなく、一定期間ねかせて熟成させ、うま味甘味、香りなどを凝縮させた肉。一般に熟成肉とよばれているものは、牛肉をドライエイジングdry aging(乾燥熟成)させたもので、アメリカではドライエイジングビーフ(略称DAB)という。これは室温1℃前後、湿度70~80%に管理された保管庫に、牛肉の塊をつるし、強い風を当てて乾燥させながら熟成させたものである。熟成肉の種類には牛肉や羊肉、鹿肉などがあり、いずれも熟成すると、うま味が増すうえ、繊維質が分解され柔らかくなって食べやすくなる。このほか、熟成法には、布などで肉を包んで乾燥を抑えながら低温でひと月からふた月ほどかけて熟成させるウェットエイジングwet aging(湿潤熟成)とよばれるものもある。

 熟成肉は、冷凍冷蔵によって肉を保管できなかった時代に、干して保存したことがその始まりだと考えられている。1980年代のアメリカでは、こうした保存方法を応用することで、一般的な牛肉よりもうま味や柔らかさが増すことが注目され、ドライエイジングなどの熟成方法の研究が進められた。日本では、2008年(平成20)ごろからアメリカ産のドライエイジングビーフが話題を集め、その後、食材を扱う店だけでなく、ステーキローストビーフなどを取り扱う料理店をはじめ、牛丼(ぎゅうどん)などのファストフード店にまで広がった。ただし、熟成肉に関する定義や製造方法、衛生管理方法は明確に規定されていないため、味にばらつきがあることや、管理のずさんなものが出回ることが懸念されている。農林水産省では、管理方法や品質を一定に保つため、JAS日本農林規格)の品目にDABを加えることを検討している。

[編集部 2016年9月16日]

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知恵蔵 「熟成肉」の解説

熟成肉

低温で一定の期間貯蔵し、熟成させた肉のこと。定義はなく、最近の熟成肉ブームの中で、様々な熟成の方法・期間による「熟成肉」が出回っているようである。
食肉の熟成は、動物が死んで死後硬直の状態になった肉を低温に貯蔵することで、硬直が解けて軟らかく食用に適した肉へと変化する過程を指す。この過程で酵素の働きで保水性が高まり、アミノ酸やペプチドが増加して味や香りも向上する。牛肉の場合、食肉処理後2日程度で死後硬直が起こり、その後軟化が始まってから5~10日程度熟成し、食肉処理後2週間前後で市販されるのが一般的である。
最近では、更に長期間の熟成により味や香りを向上させたものが販売されており、近年話題の熟成肉は、この長期熟成のものを指すと見られる。長期熟成の方法には、専用の熟成庫で温度と湿度を管理して行うドライエイジング(乾燥熟成)と、真空包装で冷蔵保存するウェットエイジングがある。ドライエイジングによる長期熟成は、熟成効果が高くうま味や香りの評価も高いが、コストが高く、一般的に流通しているのはウェットエイジングによるものである。
日本でも、古くから「枝枯らし」という手法で、和牛肉を1~2カ月の長期熟成させてきた。和牛肉は熟成により特徴的な芳香が生成され、おいしさの要因になっているという。これに対して、2010年代のブームは欧米式の赤身肉である。ステーキレストランなどのほか、最近では牛丼チェーンやファミリーレストランにも広がっている。

(原田英美 ライター/2015年)

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