日本大百科全書(ニッポニカ) 「燐鉄鉱」の意味・わかりやすい解説
燐鉄鉱
りんてっこう
strengite
第二鉄燐酸塩二水化物。バリシア石の第二鉄置換体にあたり、バリシア石系に属する。斜燐鉄鉱clinostrengiteとは同質異像関係にある。自形はc軸方向にやや伸びた斜方複錐(ふくすい)。あるいは先のとがった柱状。これが放射状集合をなすこともある。日本では不定形塊状や皮膜状のものが多い。
中性から酸性の火山岩・火砕岩を交代して生成され、鉄分に富む堆積(たいせき)岩や堆積性鉄鉱床の低温交代作用による産物をなす。いわゆる燐ペグマタイトの最終期の生成物として産する。鉄を含む金属鉱床の酸化帯にもみいだされる。日本では長野県茅野(ちの)市諏訪(すわ)鉄山(閉山)、秋田県由利本荘(ゆりほんじょう)市朱ノ又(しゅのまた)鉱山(閉山)などから産した。共存鉱物は諏訪鉱山では鉄明礬(みょうばん)石、針鉄鉱など。
同定は結晶していれば、淡紫色、赤色、淡緑色など特異な色をもち、これで判断できるが、微細粉末状のものはわかりにくい。英名はドイツ、ギーセンGiessen大学の鉱物学者ヨハン・アウグスト・シュトレングJohann August Streng(1830―1897)にちなむ。
[加藤 昭 2018年12月13日]