日本大百科全書(ニッポニカ) 「針鉄鉱」の意味・わかりやすい解説
針鉄鉱
しんてっこう
goethite
鉄の鉱石鉱物の一つ。いわゆる褐鉄鉱の主成分は低結晶度の針鉄鉱である。鱗(りん)鉄鉱lepidocrocite(γ(ガンマ)-FeOOH)およびフェロキシハイトferoxyhyte(δ(デルタ)-FeOOH)とは同質異像関係にある。堆積(たいせき)岩中に鉱層をなし、また鉄を含んだ鉱物の分解酸化によって生成される。またある種の熱水鉱床中に産するほか、鉄分に富む土壌中、地表の陸水中の沈殿物としても産する。自形は斜方板状をなし、熱水鉱床中にみられる。英名は、ドイツの文豪ゲーテの所有した鉱物標本中にこの種の存在が確認されたことに由来するといわれる。しかし現在では当初命名の対象になったものは鱗鉄鉱であったという説が有力である。
[加藤 昭 2017年5月19日]