針鉄鉱(読み)しんてっこう(その他表記)goethite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「針鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

針鉄鉱
しんてっこう
goethite

鉄の鉱石鉱物の一つ。いわゆる褐鉄鉱の主成分は低結晶度の針鉄鉱である。鱗(りん)鉄鉱lepidocrocite(γ(ガンマ)-FeOOH)およびフェロキシハイトferoxyhyte(δ(デルタ)-FeOOH)とは同質異像関係にある。堆積(たいせき)岩中に鉱層をなし、また鉄を含んだ鉱物の分解酸化によって生成される。またある種の熱水鉱床中に産するほか、鉄分に富む土壌中、地表の陸水中の沈殿物としても産する。自形斜方板状をなし、熱水鉱床中にみられる。英名は、ドイツの文豪ゲーテの所有した鉱物標本中にこの種の存在が確認されたことに由来するといわれる。しかし現在では当初命名の対象になったものは鱗鉄鉱であったという説が有力である。

加藤 昭 2017年5月19日]


針鉄鉱(データノート)
しんてっこうでーたのーと

針鉄鉱
 英名    goethite
 化学式   α-FeOOH
 少量成分  Mn,Al,Si
 結晶系   斜方(直方
 硬度    5~5.5
 比重    4.26
 色     黒褐~黄褐
 光沢    金剛~土状
 条痕    橙褐
 劈開    一方向に完全
       一方向にやや完全
       (「劈開」の項目を参照

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百科事典マイペディア 「針鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

針鉄鉱【しんてっこう】

ゲーサイトとも。組成FeO(OH)の鉄の鉱物。斜方晶系。黒褐色の柱状・針状の結晶をなし,硬度5〜6,比重4.28,へき開は完全。産状の多くは黄〜黄褐色の塊状。鉄鉱物の風化によって2次的に生成し,土壌,ボーキサイト中の主要鉄鉱物であり,褐鉄鉱は通常針鉄鉱の微細結晶の集合体である。海水や天水から1次的にも生成する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「針鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

針鉄鉱
しんてっこう
goethite

FeO(OH) 。斜方晶系。硬度5~5.5,比重 4.28。含水酸化鉄の結晶鉱物。針状,ときに繊維状。褐色で条痕は黄色。褐鉄鉱は非結晶質であるが,実際の褐鉄鉱床の鉄鉱物は針鉄鉱のことが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の針鉄鉱の言及

【褐鉄鉱】より

…褐鉄鉱という名は元来2Fe2O3・3H2Oの組成をもつ含水酸化鉄鉱物に与えられた名前である。しかしその後,褐鉄鉱とされているものは吸着水をもつ非常に細粒な針鉄鉱からなることが判明した。現在,褐鉄鉱はその鉱物組成がよく知られていない天然の含水酸化鉄鉱物集合体の名として用いられている。…

※「針鉄鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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