日本大百科全書(ニッポニカ) 「物権法定主義」の意味・わかりやすい解説
物権法定主義
ぶっけんほうていしゅぎ
物権の種類・内容は民法その他の法律で定めたもの以外は、契約などで創設することができないとする主義(民法175条)。物権法が強行法規であることを意味する。そしてこのことは、債権法が契約自由の原則に基づき任意法規であることと相対立する。土地支配と身分的支配とが結び付いていた封建時代の複雑な権利関係を整理し、近代的な意味での所有権を確立するという歴史的沿革のほか、物権を一定のものに制限してその公示性を貫き、そうすることによって取引の安全・迅速を確保するためにとられたものである。しかし、民法に定められた物権の種類は非常に少なく、実際上の必要から、一方では各種の財団抵当法などのような特別法によって新たな物権が創設され、他方では慣習法によって認められてきたにとどまる流水利用権や温泉権などが判例によって一種の物権として認められている。このように民法以外の法律および慣習法によって物権が認められているが、それは物権法定主義に反するわけでなく、その修正にとどまるというべきであろう。
[高橋康之]