知恵蔵 「特定病原体」の解説
特定病原体
特定病原体の分類は、微生物を扱う実験室のリスク対応を表す4段階のバイオセーフティーレベル(BSL:Biosafety Level)にだいたい準じており、一種が最も高リスクでBSLのグループ3にほぼ相当、一方、四種はおおむねグループ2に属している。扱う病原体のレベルに応じて施設及び管理者などの許可申請・届け出を厚生労働省に行う義務がある他に、一種病原体から三種病原体までは、指定の施設から外へ運搬する際などには公安委員会へも届け出なければならない。
01年にアメリカで炭疽(たんそ)菌によるテロが発生し5人が死亡した事件が起こったのをきっかけに、先進国を中心に国レベルの施策として病原体の管理体制を強化する取り組みが始まった。
一種病原体にはエボラ出血熱を起こすエボラウイルス属や痘そうウイルスなどがあり、二種病原体には炭疽菌、ボツリヌス菌、ペスト菌、SARSコロナウイルスなどが分類されている。
最近では12年にマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群による死亡者が国内で数人見つかったことから、翌13年3月よりその原因ウイルスであるSFTSウイルスが三種病原体に追加されている。同症候群は09年3月から7月中旬にかけて、中国の湖北省と河南省の山岳地域で集団発生したことが明らかになっている。なお、病原体ではなく疾病としての感染症は、一類から五類、及び新型インフルエンザ等、などに分類されており、特定病原体の分類とは異なる。重症熱性血小板減少症候群は四類感染症である。
(石川れい子 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報