所持(読み)しょじ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「所持」の解説

所持
しょじ

(1) 民法では,社会通念上,ある人がある物を事実上支配しているとみられる客観的状態をいう。いま現に保持しているものでなくともよく,留守宅にあるかばんなどについても所持が成立する。また占有補助者によって所持することもでき,たとえば店員によって保持されている商品についての占有者は店主である。所持 (体素) は自己のためにする意思 (心素) とともに,占有成立の要件となっている。

(2) 刑法上は,財産に対する事実上または法律上の支配の状態をいう。民法と異なり占有と同義で,財産犯罪中の窃盗罪横領罪との区別の基準となる。さらに所持が所有権その他の本権と並んで独立の財産罪の保護法益となりうるかが問題となる。直接には刑法 242条所定の「占有」が適法な正権原に基づくものに限定されるか,それとも違法な占有 (たとえば窃盗犯人の盗品に対する所持) をも含むかで論議される。最近では,違法な占有も原則として保護されるとする所持説 (または占有説) が有力化し,判例も基本的に所持説的な立場にある。

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デジタル大辞泉「所持」の解説

しょ‐じ〔‐ヂ〕【所持】

[名](スル)
身につけて持っていること。「大金を所持する」「所持品」
法律で、物を事実上支配していると認められる状態。
所有用法

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日本大百科全書(ニッポニカ)「所持」の解説

所持
しょじ

民法上では、物に対する事実上の支配をいい、所持があるか否かは、物理上の概念によってではなく、社会観念によって決せられる。したがって、倉庫の鍵(かぎ)を持っている者は、その在庫品を所持するものと解される。刑法上では、支配の意思で事実上財物を自己の支配下に置く状態をいう。各種の禁制品所持罪や窃盗罪などで問題となる。たとえば、阿片煙(あへんえん)については、所持それ自体が犯罪とされている(刑法140条)ほか、覚醒剤(かくせいざい)や麻薬などの禁制物の所持についても各種法律で規制されている。なお、所持はかならずしも適法である必要はないから、禁制品または贓物(ぞうぶつ)(盗品等)の所持者からこれを窃盗することも窃盗となる。

[竹内俊雄]

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精選版 日本国語大辞典「所持」の解説

しょ‐じ ‥ヂ【所持】

〘名〙
① 持っていること。携帯すること。
※即身成仏義(823‐824頃)「二、三昧耶曼荼羅、即所持標識刀劔輪宝金剛蓮華等類是也」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「自己所持(ショヂ)の手拭、爰さ掛置くたい」
② 法律で、人が物を事実上支配していると認められる状態。〔仏和法律字彙(1886)〕

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世界大百科事典内の所持の言及

【知行】より

…ただ大名の地位だけは,領地・領民を平穏に統治すべき職務とそこから徴収する権益とが結びついているという意味で,若干中世と似た構造が残っていたが,大名の領国支配については領掌と知行が結びついた〈領知〉という言葉が用いられ,知行はほとんど用いられていない。中世までは支配秩序の上下を通じてみられた請負的性格のゆえに,どの職についても共通に知行もしくは領掌が用いられたのに対し,近世ではわずかにその性格を残す大名については〈領知〉,官職的性格を強くした一般武士については俸禄の〈知行〉,というように用語が分化し,さらに農民の土地支配についてはまったく別系統の〈所持〉が用いられるようになった。このように用語は,物を支配するものの地位の性格によって変化するのである。…

【中世社会】より

…鎌倉幕府の《御成敗式目》が定めた〈百姓の去留(きよりゆう)の自由〉は,このような百姓のあり方を前提にしていたといえる。 やがてこれらの百姓は,長年にわたる耕作の事実をとおして土地への結びつきを強め,権利として上から与えられるというよりは,事実的占有をとおして,〈所持〉という語に表現される農民的土地所有権を獲得していった。室町時代には,百姓は土地に結びついたもの,土地とは切り離せないもの,という農民としての百姓の観念が社会的に広く認められ,職能に結びついた身分としての百姓が生まれた。…

※「所持」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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