民法上では、物に対する事実上の支配をいい、所持があるか否かは、物理上の概念によってではなく、社会観念によって決せられる。したがって、倉庫の鍵(かぎ)を持っている者は、その在庫品を所持するものと解される。刑法上では、支配の意思で事実上財物を自己の支配下に置く状態をいう。各種の禁制品所持罪や窃盗罪などで問題となる。たとえば、阿片煙(あへんえん)については、所持それ自体が犯罪とされている(刑法140条)ほか、覚醒剤(かくせいざい)や麻薬などの禁制物の所持についても各種法律で規制されている。なお、所持はかならずしも適法である必要はないから、禁制品または贓物(ぞうぶつ)(盗品等)の所持者からこれを窃盗することも窃盗となる。
[竹内俊雄]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…ただ大名の地位だけは,領地・領民を平穏に統治すべき職務とそこから徴収する権益とが結びついているという意味で,若干中世と似た構造が残っていたが,大名の領国支配については領掌と知行が結びついた〈領知〉という言葉が用いられ,知行はほとんど用いられていない。中世までは支配秩序の上下を通じてみられた請負的性格のゆえに,どの職についても共通に知行もしくは領掌が用いられたのに対し,近世ではわずかにその性格を残す大名については〈領知〉,官職的性格を強くした一般武士については俸禄の〈知行〉,というように用語が分化し,さらに農民の土地支配についてはまったく別系統の〈所持〉が用いられるようになった。このように用語は,物を支配するものの地位の性格によって変化するのである。…
…鎌倉幕府の《御成敗式目》が定めた〈百姓の去留(きよりゆう)の自由〉は,このような百姓のあり方を前提にしていたといえる。 やがてこれらの百姓は,長年にわたる耕作の事実をとおして土地への結びつきを強め,権利として上から与えられるというよりは,事実的占有をとおして,〈所持〉という語に表現される農民的土地所有権を獲得していった。室町時代には,百姓は土地に結びついたもの,土地とは切り離せないもの,という農民としての百姓の観念が社会的に広く認められ,職能に結びついた身分としての百姓が生まれた。…
※「所持」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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