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炭疽 たんそanthrax

翻訳|anthrax

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

炭疽
たんそ
anthrax

脾脱疽ともいう。炭疽菌によって起る感染症。病原菌の侵入部位によって,皮膚炭疽,肺炭疽,腸炭疽などの病型がある。炭疽菌は元来はウシ,ヒツジなどの家畜の病原菌で,敗血症で死亡するとき死体が黒く見えることから炭疽と呼ばれた。

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デジタル大辞泉の解説

たん‐そ【炭×疽】

炭疽菌の感染によって起こる人畜共通の感染症。血液の中で菌が増殖し、敗血症を起こす。主に牛・馬・羊・豚に伝染し、人に感染することもある。日本では家畜伝染病予防法監視伝染病家畜伝染病)、人間の場合は感染症予防法の4類感染症とされる。脾脱疽(ひだっそ)。炭疽熱。
多肉の果実や芋・豆などに発生する病害。子嚢菌(しのうきん)不完全菌によるもので、茎や葉では病斑を生じて枯れ、果実ではくぼみを生じて暗黒色となり腐敗する。炭疽病。

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百科事典マイペディアの解説

炭疽【たんそ】

脾脱疽とも。炭疽菌による急性伝染病家畜法定伝染病で牛,馬,羊,ヤギ,豚がかかるが,家畜や獣毛を扱う人にも感染する。牛では高熱,口や肛門粘膜の出血,血様の下痢が見られる
→関連項目細菌学細菌兵器人獣共通伝染病届出伝染病

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栄養・生化学辞典の解説

炭疽

 炭疽菌[Bacillus anthracis]によって起こる家畜の感染症.ヒトにも感染する.通常皮膚から感染し,諸臓器の出血,漿液の浸出がみられ,敗血症を起こしてときに死に至る.

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世界大百科事典 第2版の解説

たんそ【炭疽 anthrax】

炭疽菌Bacillus anthracisが原因で起こる人獣共通伝染病。脾脱疽ともいう。病原菌は1876年R.コッホによって明らかにされ,81年にL.パスツールが減毒生菌による免疫法を確立した。元来は,ウシ,ウマ,ヒツジ,ヤギ,ブタなど,野生動物や家畜の感染症であるが,病獣や皮革との接触によって,ヒトにも感染する。炭疽菌は長さ3~10μmの杆菌で,生体に感染すると血液や臓器に出現し,これがいったん酸素に接すると,きわめて耐久性のある芽胞を形成,これが長期にわたって感染源となる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

炭疽
たんそ
anthrax

炭疽菌Bacillus anthracisの感染によっておこる敗血症型の家畜法定伝染病で、人獣共通感染症でもあり、ヒトの場合は感染症予防・医療法(感染症法)で4類感染症に分類される。別名の脾脱疽(ひだっそ)は、脾臓が著明に腫大(しゅだい)して暗赤色に軟化するところからよばれたものである。また炭疽病ともいうが、これは、炭疽菌とは異なる種々の炭疽病菌によっておこる農作物や果樹の病害である炭疽病anthracnoseと紛らわしいので、あまり使われない。[柳下徳雄]

歴史的意義

炭疽菌は、数えきれないほどすでに発見されている病原微生物のうち、最初に確認されたものであり、炭疽は近代細菌学および免疫学発展の端緒となった疾患としても有名である。すなわち、1850年罹患(りかん)ヒツジの血液中に炭疽菌が発見され、1863年には罹患ヒツジの血液を用いて感染実験も行われ成功したが、とくにその後行われたコッホとパスツールの業績は、今日の細菌学と免疫学の基礎となったものとして知られる。まずコッホは、1876年に炭疽菌の純粋培養を行い、実験動物への感染成立を観察し、さらに感染動物から同一菌の証明を行って炭疽の原因菌であることを立証した。またパスツールは、1881年に減毒生菌ワクチンをつくり、家畜に接種して免疫を成立させることを発見した。[柳下徳雄]

動物の炭疽

ウシ、ウマ、ヒツジなど草食動物がおもに発病し、肉食獣には比較的少ない。炭疽菌は芽胞をつくって土壌中に長期間生息するので、粘膜や皮膚の創傷から感染しやすく、潜伏期間は1~5日で、突然発熱して数日以内に死亡するため、動物の急死によって発症を知る場合が多い。
 症状としては発熱のほか、チアノーゼ、呼吸困難、皮下の浮腫などがみられ、剖検では急性の脾腫、血液凝固不全が認められる。確実な診断は病原菌の証明によるが、血清学的診断も行われる。ヒトにみられるような皮膚型はなく、ヒトの場合よりも急性に経過する。[柳下徳雄]

ヒトの炭疽

世界各地にみられるが、日本の場合、第二次世界大戦前には輸入した獣毛や皮革を扱う加工業者や肥料用の輸入骨粉を用いた農業従事者などに感染が多くみられた。戦後は家畜に接触する機会の多い獣医、食肉処理場従業者、酪農家などが年に数人感染する程度となり、1974年(昭和49)以降は患者の発生をみない年が多い。
 2001年10月、アメリカ合衆国フロリダ州、ニューヨーク市、ワシントンDCなどで数十人から炭疽菌が検出され、死者も発生、同時多発テロ事件直後の折柄、生物兵器によるテロの可能性が指摘され注目を浴びた。
 感染経路によって病型が異なり、皮膚の損傷部から侵入すると、高熱と皮膚の膿瘍(のうよう)がみられ、特徴的な壊死(えし)巣(炭疽癰(よう))をつくる。また菌を吸入すると、咳(せき)、痰(たん)、呼吸困難などがみられる肺炭疽をおこし、感染動物の肉を食べると、嘔吐(おうと)や下痢などがみられる腸炭疽をおこす。いずれも菌が急速に全身で増殖するようになり、敗血症に陥って死亡する。潜伏期は2~5日で、多くは1週間以内に死亡したが、ペニシリン系をはじめ、各種の抗菌薬が治療に使われるようになってからは、死亡例はほとんどなくなった。[柳下徳雄]

炭疽菌

病原菌のうちでは最大の桿菌(かんきん)で、長さ4~8マイクロメートル、幅1~1.5マイクロメートルもある。両端は直断された形で、しばしば連鎖状に連なる。鞭毛(べんもう)がなく、運動もせず、グラム染色は陽性。条件が悪いと芽胞をつくり、乾燥状態でも10年以上生存するほか、生体内で増殖した菌の周囲には厚い莢膜(きょうまく)があり、加熱、日光、消毒剤などにも強い抵抗性を示すので、汚染されたものはすべて焼却するか、徹底的な消毒(塩素剤やヨード剤など)を行う。[柳下徳雄]

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