日本大百科全書(ニッポニカ) 「特定行為研修」の意味・わかりやすい解説
特定行為研修
とくていこういけんしゅう
看護師の業務において、医師判断を待たずに「手順書」により一定の診療の補助業務(特定行為)を行うことができる看護師を養成するための研修制度。
2013年(平成25)、保健師助産師看護師法が一部改正され、「特定行為に係る看護師の研修制度」が創設された(同法37条の2)。この制度は、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けてさらなる在宅医療の推進を図るため、従来から医師の指示のもとに実施されてきた看護師による診療の補助業務の一部を「特定行為」として定め、その業務を「手順書」に基づくことにより、医師判断を待たずに行うことができる看護師を養成するものであり、2015年(平成27)から制度に基づく研修が開始された。研修は「特定行為区分」ごとに厚生労働大臣の指定を受けた医療機関・学校等で実施され、研修修了者には受講した研修機関より研修修了証が発行される。研修を修了することで、修了した特定行為区分に含まれる特定行為を手順書により実施することができるようになる。
なお、本制度施行から数年を経ても特定行為研修を修了した看護師の増加が低調であったことから、2019年(令和1)からは研修時間が大幅に短縮され実施されている。
[横山美樹 2021年6月21日]
特定行為
特定行為とは「診療の補助」であり、かねてより医師の指示のもとに看護師によって実施されてきたものであるが、医師の判断を待たずに手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力、判断力、ならびに高度かつ専門的な知識・技能が特に必要とされる行為をいう。2021年の時点で、「呼吸器(気道確保に係るもの)関連」「創傷管理関連」「血糖コントロールに係る薬剤投与関連」など21の「特定行為区分」のもとに「経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整」「創部ドレーンの抜去」「インスリンの投与量の調整」など、38の行為が特定行為に定められている。
なお手順書とは、医師が看護師に診療の補助を行わせるために、その事前指示として作成する文書であり、「看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲」「診療の補助の内容」などが定められたものをいう。
[横山美樹 2021年6月21日]