日本大百科全書(ニッポニカ) 「狂えるオルランド」の意味・わかりやすい解説
狂えるオルランド
くるえるおるらんど
Orlando furioso
イタリア・ルネサンス期の詩人ルドビーコ・アリオストの騎士道叙事詩。八行韻詩46歌からなる決定版は1532年の刊行。詩人と同じくエステ家に仕えていたM・ボイアルドの未完の作品『恋するオルランド』を受け継いで書かれた。『ロランの歌』の伝承に始まる中世騎士物語の到達点となった作品。「貴婦人、騎士、戦い、愛を、礼節、勇猛を、私は歌う」という第1歌冒頭の2行に、この壮大な叙事詩の主題は示されている。シャルル大帝麾下(きか)のキリスト教徒軍とサラセン軍の戦いを背景に、勇将オルランド(ロラン)の、東国の美貌(びぼう)の姫アンジェリカへの実らぬ恋、それゆえの狂乱を描き、フェッラーラ・エステ家の始祖たる武将ルッジエーロと女戦士ブラダマンテの愛の成就をもって、物語は終わる。物語的かつ詩的な韻律の均整と破調、ときにアイロニック、ときに劇的なトーンのうちに運ばれる筋の転変、織り成す幻想と現実、その独創性と完成度によって、イタリア・ルネサンス文学の精華と目される古典であり、イタリア本国はもとより、ボルテールやヘーゲルが高い評価を与えたことでも知られている。
[古賀弘人]