頭蓋(とうがい)縫合部の早期閉鎖(頭蓋早期癒合症)によって頭蓋の前後径や左右径、ときにはその両者とも狭くなる疾患で、頭蓋狭窄症(とうがいきょうさくしょう)ともいう。新生児期にはまだ頭蓋冠を形成する頭蓋骨の骨化が不十分で、泉門とよばれるいくつかの間隙(かんげき)があり、結合組織性膜で覆われている。板状骨の成長は辺縁部にあり、骨と骨との接合した縫合部で骨の造成が脳の発育(増大)とともに盛んに行われ、生後5、6か月で縫合部が線維性に癒合し始め、1年後には頭囲が成人の50%、3年で80%まで成長する。ところが、なんらかの理由で骨の成熟(骨化)が早期におこって縫合部が固く癒合してしまうと、脳は成長(増大)を続けているのに骨の成長は停止してしまう。一部で早期癒合がおこると、脳はその周辺部に向けて増大する結果、舟状頭蓋、短頭蓋、尖(せん)頭蓋、斜頭蓋、広頭蓋など、頭蓋の特異な形態的変形をおこす。また、すべての縫合部が早期に固く癒合すると、頭蓋の発育はそのまま停止して小さい頭になる。このとき、脳は発育を続けて増大するため著明な脳圧亢進(こうしん)がみられ、放置すれば脳に重大な障害を残すことになる。
(1)舟状頭蓋 矢状縫合の早期癒合によるものでもっとも頻度が高く、男子に多い。
(2)短頭蓋 両側冠状縫合の早期癒合によるもので、ほかの形態異常を合併する頻度が高い。
(3)斜頭蓋 一側冠状縫合の早期癒合による。
(4)尖頭蓋 矢状縫合、冠状縫合、人字縫合のすべてが早期に癒合することによる。
(5)三角頭蓋 前頭縫合のみの早期癒合による。このうちの多くは頭蓋顔面骨形成不全として、頭蓋のみならず顔面の変形を伴う。症候群の一部として頭蓋縫合早期癒合を伴うものに、両眼隔離症、眼球突出などを伴うクルーゾンCrouzon病、合指症を伴うアペルトApelt症候群などがある。
臨床症状としては、頭蓋の変形のほか、顔面の変形、頭蓋内圧亢進症状、眼症状、精神運動発達遅延、合指症などを伴うことがある。
狭頭症の治療は早期に手術的治療が必要になり、早期の縫合開放術を行う。顔面の変形を伴うときは、前頭骨の前方移動など顔面形成を同時に行う頭蓋顔面形成術をする。なお、脳が大きくならないため頭蓋も小さくなる小頭症は、形は似ていても別に扱われる。
[加川瑞夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…脳の大きさを測ることは困難なので,頭囲(頭の周囲)を巻尺で測る(頭囲の標準値は,出生時約33cm,12ヵ月約43cm,成人約53cm)。頭蓋骨早期融合のため生ずる狭頭症(頭蓋が大きくならないために頭が小さい)とは通常区別されている。脳の発育障害の原因としては,遺伝性小頭症(真性小頭症)のほかに胎内感染(たとえば風疹やサイトメガロウイルスの感染),重症仮死などの周産期障害,頭蓋内出血,中枢神経感染症などがある。…
※「狭頭症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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