現代革命(読み)げんだいかくめい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「現代革命」の意味・わかりやすい解説

現代革命
げんだいかくめい

ロシア革命中国革命キューバ革命などでは,資本主義が未発達であるがゆえにプロレタリアート勢力も弱体であり,したがって職業的革命家による前衛党の暴力的権力奪取に主眼がおかれた。だが先進資本主義国家は恐慌を繰返しつつも,一応安定した生産力の上昇と大衆の生活水準の向上とをもたらした。この現実を前にして先進資本主義国の革命の方向づけの問題が生じてきた。こうして現代革命論が花盛りとなり,多様な革命が提唱されるにいたった。たとえば H.マルクーゼは学生,青年労働者らの左翼知識人が労働者階級の革命的機能を代行しなければならないと論じ,また文化革命論者は反文化闘争を主張している。さらにヨーロッパの共産主義政党の多くは構造改革路線を掲げている。これはすでに 1920~30年代に A.グラムシによって提唱されたものである。彼は政治闘争と戦争とを対比して,塹壕を上部構造=国家と見立て,その背後に複雑な構造をもつ市民社会があるとした。つまり「政治革命」以前の「社会革命」の進展によって先進国革命を遂行しなければならないとしたのである。この考えは,P.トリアッチによって 56年イタリア共産党第8回大会で「社会主義へのイタリアの道」として定式化された。当時このような路線は,改良主義として批判され必ずしも先進諸国に受入れられなかったが,60年代においてユーロコミュニズムとして定着した。しかし,89年の東欧革命を経験した現代世界では,現代革命の表わす意味も大きく変化しつつある。ポーランド民主化運動に端を発した 89年の東欧民主化運動はソ連をはじめとする社会主義体制を崩壊させた。 86年のフィリピン革命,東欧革命などの最近の革命は,ともに民主化を最大のスローガンとしている。もはや革命がマルクス主義専売特許であった時代は終焉したといえよう。

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