日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
生産的労働・不生産的労働
せいさんてきろうどうふせいさんてきろうどう
productive labour, unproductive labour 英語
produktive Arbeit, unproduktive Arbeit ドイツ語
一般に人間の生活に必要な生産手段や生活資料を生産する労働を生産的労働といい、それ以外の労働を不生産的労働という。しかし、資本主義社会では生産が資本家的性格をもつために生産的労働もおのずと特殊歴史的性格をもつことになる。つまり、資本主義社会では生産的労働は資本に包摂され資本の利潤を生み出す労働をさし、不生産的労働は利潤、利子、地代、賃金などの諸所得と交換される労働をさすことになる。しかしA・スミスは、以上のような利潤を生み出す労働としての生産的労働に加えて、物的生産に向けられる労働を生産的労働とし、用役(サービス)に向けられる労働を不生産的労働として規定した。この面からみれば、生産的労働は農業、鉱業、工業、運輸などの物的生産部門の労働(この場合これらの部門での計画・監督など物的生産に対する間接労働も生産的労働に含まれる)をさし、下僕などの個人的用役に従事する労働をはじめ、商業・金融などの流通部門の労働、医療・興行・放送・ホテルなどのサービス部門の労働、官吏・教育・警察・軍隊など公務に従事する労働は不生産的労働となる。しかし、資本主義の発展の高度化に伴って、これら不生産的部門の労働のもつ比重がしだいに増大するなかで、非物的生産の労働も価値を形成する労働とみなし、その意味で生産的労働とする考えも現れている。
[藤田勝次郎]