知恵蔵 「田中好子」の解説
田中好子
69年に東京音楽学院に入学。スクールメイツのメンバーを経て、72年にNHK「歌謡グランドショー」のマスコットガールとして伊藤蘭、藤村美樹とともに「キャンディーズ」と命名され活動開始。翌年9月「あなたに夢中」でレコードデビュー。好子の「好」が「す(き)」と読む字であることから「スーちゃん」という愛称で親しまれた。その後、オリコンチャートベスト10入りをした「年下の男の子」を始め、多くのヒット曲を飛ばす一方で、「8時だョ!全員集合」などのバラエティー番組ではコメディアンらとともにコントにも多々出演し、アイドルとして一世を風靡(ふうび)していた。しかし、78年、「普通の女の子に戻りたい」の名文句とともにキャンディーズは解散し、芸能界を一時引退した。
80年、芸能界に復帰。数々のテレビドラマや映画に出演し、徐々に女優としての頭角を現していく。89年には井伏鱒二の小説を原作に原爆症を描いた映画「黒い雨」に主演し、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞等数々の賞に輝き、演技派女優として高い評価を受けた。
91年に結婚し、その翌年に乳がんが見つかったが、親族以外には公表せずに治療を受けながら女優業を続けた。またその傍らで、厚生労働省公衆衛生審議会委員やエイズ予防財団日本エイズストップ基金運営委員、国立国際医療センター顧問なども務めた。
2011年、がんが他臓器にも転移し、4月21日に逝去。享年55歳。元キャンディーズの仲間2人にも闘病の事実が明かされたのは3年前のことだったという。2000人以上が参列した葬儀後には、本人の肉声での録音テープが流された。1カ月余り前に起こった東日本大震災に触れた「天国で、被災された方のお役に立ちたい」という言葉に、さらに涙した人も多い。
(菘(すずな)あつこ フリーランス・ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報