〈たや〉とよばれる建物は多屋とも書かれ,その内容はさまざまである。農民が田畑の番をするための小屋,山間地など遠距離にある田畑への出作り期間中の居住用に建てた小屋,また出産の際の産小屋,月経期間中の女性が忌み籠る小屋,喪に服するための忌小屋など,主屋と離れた別棟で,とくに建てられた小屋のこともいう。さらに所領が分散している場合,領主がこれらを管理するために置く施設も〈たや〉といい,地名にもなっている。そのほか,中世には寺社の本山,本社に対して別院,末社などの出張所的機能をもつもの,またそこにある参詣人の休息所のことも他屋といったようである。たとえば蓮如が建設した初期の寺内町である吉崎御坊(現福井県あわら市,旧金津町)において,他屋ということばが用いられている。これはその建設期に,在地の本坊を離れて本山の守護のために集まり経営に参加した坊主が実務の運営にあたった寺務所的機能をもったもので,門内の中心部分にあった。一方,門外に御坊をとりまく形で門徒たちによって建設された参詣門徒の宿泊所も他屋であり,戦時には寺内町防衛の臨戦的屯所としての役割をはたした施設も他屋とよばれていた。いずれにしても,本拠地に対し出張所を〈たや〉といっていたと考えられる。
執筆者:玉井 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…出産をする部屋や施設。特別に産小屋を設けるものと自宅で出産するものとの二つがある。産小屋はデベヤ,タヤ,ヒマヤ,カリヤなどとよばれ,月経小屋を兼ねているものもある。いずれも産の忌により,家の火をけがすのをおそれて,別火の生活をするものであった。記紀にみられる豊玉姫の出産のように,古くは出産のための仮小屋を村はずれや山中,海辺などに臨時に建てて,産がすめば燃やすかこわすかするものであった。明治半ばころまでは,村共同の産小屋を設け,産婦が産の忌の間(21~75日)ここにこもる風が,志摩半島,敦賀半島,若狭湾沿岸,瀬戸内海沿岸,伊豆諸島などに見られ,敦賀半島では1964年ころまで使われていたものもある。…
…一時的使用のために建てた小屋のことであるが,なかには古い思想・信仰の面影をとどめたものも多い。臨時の作業や材料保管のために小屋を建てるのはふつうのことであるが,山間地の山仕事・焼畑などのための山小屋・出作り小屋となると数ヵ月にわたる生活の場となる。それらをカリヤとよぶ例はまだ聞かないが,女性の出産・月経の忌みを避けるために一時的に別火生活させる〈産小屋(うぶごや)〉〈小屋〉をカリヤとよぶ土地はしばしばあった。…
…メンスまたは単に〈生理〉ともいう。女性の性成熟期を通じ,妊娠,産褥(さんじよく)期を除いて,一定の周期をもって規則正しく発来する,子宮内膜からの生理的出血のことで,女性にみられる性周期現象の一部である。性周期は,間脳・脳下垂体‐卵巣系における神経系と内分泌系との間の,一種の生体自動調節機構によってもたらされるもので,脳の視床下部・脳下垂体前葉と卵巣とが相互に作用しあい,それぞれからのホルモン分泌が巧妙に調節されて起こる。…
※「田屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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