家庭医学館 「甲状腺の良性腫瘍」の解説
こうじょうせんのりょうせいしゅようせんしゅのうほうせんしゅようこうじょうせんしゅ【甲状腺の良性腫瘍(腺腫/嚢胞/腺腫様甲状腺腫) Benign Thyroid Tumor】
甲状腺の良性腫瘍には、腺腫(せんしゅ)、嚢胞(のうほう)、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)の3種があります。これらの良性腫瘍と甲状腺がん(「甲状腺がん」)を合わせて結節性甲状腺腫(けっせつせいこうじょうせんしゅ)と呼んでいます。
甲状腺の良性腫瘍は、男性の3~5倍も多く女性にみられ、年齢は40歳代がもっとも多く、以下30歳代、50歳代の順になります。過半数の患者さんが45歳以下で発病しています。
良性腫瘍では、頸部(けいぶ)に腫(は)れをみる以外、症状がないのがふつうです。腫れに気づいたら、甲状腺の専門医のいる外科か内科を受診しましょう。
腫れが硬く、表面に凹凸(おうとつ)があって、皮膚と癒着(ゆちゃく)していたり、急速に大きくなってくる場合は、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)である可能性が高いので注意してください。
[検査と診断]
甲状腺に腫瘍ができても、血液中の甲状腺ホルモンの量が異常を示したり、白血球数(はっけっきゅうすう)や血沈(けっちん)(赤沈(せきちん))など、一般的な血液検査で、異常が出たりすることはありません。
腫瘍が良性か悪性かを調べるには、各種の画像診断や腫瘍があると血中に増える物質(腫瘍マーカー)の測定が行なわれます。しかし、もっとも確実な診断法は、甲状腺の組織を針で突いて、少量の組織をとり、顕微鏡で調べる針生検(はりせいけん)です(甲状腺の検査(甲状腺の検査の「採血を必要としない検査」の甲状腺針生検))。
[治療]
年2~3回程度、定期的に診察を受けるだけで、治療を必要としないこともあります。
●甲状腺(こうじょうせん)ホルモン療法(りょうほう)
腺腫や腺腫様甲状腺腫のなかには、甲状腺ホルモン(T3剤がよく用いられる)を内服すると、縮小したり消失したりするものがあります。効果は人によってちがい、有効な場合は、服用してから2~3か月で、腫瘍が縮小してきます。
●手術療法
比較的大きな腺腫や、嚢胞の場合には、甲状腺内にできた腫瘍だけをとる核出術(かくしゅつじゅつ)が行なわれます。
また、腫瘍が大きく、気管や食道を圧迫している場合は、腫瘍のできている部分の甲状腺の摘出が行なわれます。
どちらも2~3週の入院治療が必要です。