日本大百科全書(ニッポニカ) 「異常潮」の意味・わかりやすい解説
異常潮
いじょうちょう
海には潮汐(ちょうせき)や波浪が日常的にみられるが、これら以外の異常な潮位変動を(広義の)異常潮という。海底地震に伴う津波(つなみ)と、台風などによる高潮(たかしお)は、典型的なものであるが、直接的な原因が明確であるため、「異常潮」として扱われることが少ない。異常潮位やセイシュのように直接的原因があまり明確でない現象のみを(狭義の)異常潮とよぶことが多い。
異常潮位は、海流、海水温などの変動と、広範な気象の間接的影響が重なって、沿岸における潮位が20~30センチメートル上昇または下降する現象で、数日から数十日続くことが多い。離島では、高気圧性の渦を伴った暖水塊の移動によっても発生する。夏から秋にかけては平均潮位が高く、異常潮位が大潮(おおしお)と重なると、満潮時に低地で浸水や冠水の被害が生じる。浸水の規模が小さくても、長時間にわたって交通障害などを引き起こすので、地域によっては大きな影響を受ける。また潮位の上昇は広範囲に及ぶことが多く、各地でほぼ同時に被害が発生することもある。
セイシュは、気圧や風の変動によって生じた周期数分から数十分の海の長波が、港湾や陸棚で共振をおこしたもので、「副振動」地方によっては「あびき」などともよばれる。大きなものは全振幅が1メートル以上に達し、係留ロープが切れて船舶が流されたり、陸上へ浸水するなどの被害が生じることもある。
[岡田正実]