翻訳|long wave
電波を利用上の便宜から波長によって分類したものの一つ。波長の範囲は10キロメートルから1キロメートルまで、周波数の範囲では30キロヘルツから300キロヘルツまでの電波を慣用的に総称していう。電波法施行規則に定められた周波数区分のLF(low frequency)、波長区分のキロメートル波に相当する領域である。
長波においては1000キロメートル以内の近距離では地表波が優勢であり、周波数が低いほど減衰は少ない。さらに海上伝播(でんぱ)のほうが陸上伝播より減衰が少ないため、初期の海上通信に好んで使用された。地表波が優勢な領域では電界強度は安定しており、昼夜および季節による変化も少ない。伝播距離が非常に長くなると電離層(電離圏)波が現れてくる。電離層波は昼間はD層(60~90キロメートル上空に存在)で、夜間はE層(90~110キロメートル上空に存在)で回折して伝播する。この波長の電波は、あたかも電離層のある高度に金属板の天井が存在するかのように、大地との間を反射しながら伝播するので、ほとんど減衰を受けることなく遠距離に到達する。短波通信が受けるフェージング(異経路伝播波との干渉により受信音がひずみ、不安定になること)のような現象も少なく、1930年ごろの無線通信の初期の段階においてはまことに都合のよい波長帯であった。長波はこの特徴を生かして、大陸間を結ぶ遠距離通信、海岸局と遠洋航海の船舶、地上の航空局と航空機との通信がモールス通信で行われた。これらの通信は2000年代には短波通信へ、衛星通信へ、海底光ケーブルへと引き継がれて、すでに行われていない。その理由は、波長が長いので、送信設備やアンテナが大型になること、周波数が低いために帯域を広げることができず、高速のデータ伝送ができないことによる。
しかし、長波の安定性を利用して日本では、情報通信研究機構(NICT)がJJYの局名(無線局の呼出し符号)で、1999年(平成11)6月より福島県田村市の「おおたかどや山標準電波送信所」から40キロヘルツで、2001年(平成13)10月より佐賀県佐賀市の「はがね山標準電波送信所」から60キロヘルツで標準電波として50キロワットで送信を開始した。これらの電波は、世界の周波数標準であるとともに、自動較正(こうせい)方式の時計(腕時計を含む)の較正(測定器の補正の値を決定すること)のためにも使用されている。
[石島 巖]
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…これに対し,風浪が発達して波形がけわしくなり,不安定になって砕ける状態は白波(しらなみ)という。一般に水面の波は,その波長にくらべて水深が十分大きいところでは水深の影響はなく,波の形は波長に比例した速度で伝播するが,水深が,だいたい波長の1/20~1/25よりも浅くなると,波長には関係なく水深の平方根に比例した速度で進む〈長波〉の性質をもつようになる。波が海岸に近づくにつれて,波長の長いものから順次,長波となり,伝播速度は小さくなり波長が縮まると同時に波高が増す。…
※「長波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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