白金(元素)(読み)はっきん(英語表記)platinum

翻訳|platinum

日本大百科全書(ニッポニカ) 「白金(元素)」の意味・わかりやすい解説

白金(元素)
はっきん
platinum

周期表第10族に属し、白金族元素の一つ。プラチナともいう。スペインのウロアDon Antonio de Ulloa(1716―1795)は、1748年に出版した著書『南米西海岸探検記』のなかで、この地方のスペイン人の間でPlatina del Pinto(ピント川の小さな銀)とよばれている、銀に似た白色の金属のことを述べており、これが白金についての最初の記録である。platinaはスペイン語の銀plataの愛称語であり、platinum(白金)の語源になっている。主産地はロシアのウラル地方のほか南アフリカ、コロンビア、カナダなどで、他の同族元素とともに主として遊離の状態で産出する。その純度は75~85%であり、不純物は同族元素である。

[鳥居泰男]

製法

通常、砂礫(されき)中に粒状あるいは砂状で産出するので、水簸(すいひ)によって選鉱して白金鉱を集める。これを王水に溶かしてクロロ白金とし、塩化アンモニウムを加えて沈殿させ、他の金属と分離する。得られたクロロ白金酸アンモニウム(NH4)2PtCl6を700~800℃に熱すると黒色海綿状のいわゆる白金海綿が得られる。これから融解または鍛造により塊状のものが得られる。

[鳥居泰男]

性質

銀より硬く、展性・延性がある。少量のイリジウムを加えると硬さは著しく増すが展性は減る。空気や水分に対してきわめて安定で、高温に熱しても変化せず、酸・アルカリにも強く、耐食性に富んでいる。ただし王水には徐々に溶け、高温では水酸化アルカリに侵される。微粉状の白金はその容積の100倍以上の水素を吸収し、また赤熱した白金は著しく水素を吸収し透過させる。さらに酸素ヘリウムなどをも吸収する。このような場合、吸収された水素や酸素は活性化される。

[鳥居泰男]

用途

細粉状または白金海綿として酸化、還元触媒に用いられる。度量衡原器白金抵抗温度計、実験用るつぼ、熱電対、電気接点材料、発火栓、電極、化学装置、ダイスノズルなど多様の用途があり、歯科材料、装飾用としても使われる。

[鳥居泰男]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例