水簸(読み)スイヒ

デジタル大辞泉 「水簸」の意味・読み・例文・類語

すい‐ひ【水×簸】

固体粒子によって水中での沈降速度に差があることを利用して、粒子の大きさ別に分ける方法陶土調整や、砂金採取などに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「水簸」の意味・読み・例文・類語

すい‐ひ【水簸・水飛】

  1. 〘 名詞 〙 水中での固体粒子の沈降速度が粒子の大きさによって異なることを利用して粒径を二種以上に分離する操作。陶土を調整したり、砂金から金を採取したりする際に行なう。
    1. [初出の実例]「余が工夫して、水干して絵の具に用ひたり」(出典:随筆・独寝(1724頃)下)
    2. 「葛(くず)の粉わらびの粉を水飛(スヰヒ)する法のごとし」(出典:続鳩翁道話(1836)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「水簸」の意味・わかりやすい解説

水簸 (すいひ)

重力を利用した一種の簡単な湿式分級法。エルトリエーションelutriationとも呼ばれる。次のようなものがある。(1)粘土などの微細な固体粒子を水中に懸濁させ,しばらく放置すると,粗い粒子が微細な粒子よりも速く沈降するので,のちに容器を傾けるなどして沈積物から上液を分離し,そのことによってある程度の分級が可能である。(2)懸濁液を供給した容器の下部から連続的に給水を行うような方法で上昇流を発生させると,粒子の沈降速度と上昇流の速度との均衡関係により,やはり分級を行うことができる。(3)とい(樋)のようなほぼ水平の細長い水路に懸濁液を流してやると,粗い粒子がより速く沈降するため,微細粒子だけが水とともに流出する。窯業原料となる粘土鉱物から粗い粒子を分離・除去し,製品の品質を向上させるために広く用いられている水簸の方法としては,上記のうち(3)が最も一般的である。
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岩石学辞典 「水簸」の解説

水簸

堆積物粒度分析の方法で,上向きの空気,水の流れの中に粒を置いて異なった粒度に分離する従来からの方法[Milner : 1952].ラテン語eluoは洗い落とすの意味[Milner : 1952].成分鉱物を水中に分散させ,比重の大きいもの,荒さの大きいものほど速く沈澱することを利用する.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水簸」の意味・わかりやすい解説

水簸
すいひ
elutriation

比重選鉱の一種。ジグ選別。粉砕した鉱石を流水にさらし,比重の小さい部分を洗い流し,底に沈んだ重い部分を取出す方法。砂金を分別採集する際などによく用いられる。また,粉体製造工程で,粒径による水中の沈降速度の差を利用して微粒子と粗粒子を分離する方法。

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世界大百科事典(旧版)内の水簸の言及

【土器】より

…一方,粘土に水を多量に加えてかき混ぜ,重い砂粒を沈殿させ,上の泥水を別の容器に移してその水分を蒸発させることで緻密な粘土を得ることができる。これを水簸(すいひ)(水飛,水漉とも書く)と呼び,磁器や高級な陶器の素地作りでは,今日も重要な工程である。なお別種の粘土を混ぜ合わせて好適な素地を作ることもある。…

※「水簸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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