デジタル大辞泉
「イリジウム」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
イリジウム
- 〘 名詞 〙 ( [英語] iridium ) 白金族元素の一つ。記号 Ir 原子番号七七。原子量一九二・二。一八〇四年、英国のテナントが発見。銀白色の光沢を有し、融点、硬度ともに高いが、延性が小さくもろい。オスミウムとの合金は万年筆のペン先に、白金との合金はメートル原器、キログラム原器、理科学精密機械などに用いられる。〔舎密開宗(1837‐47)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
イリジウム
いりじうむ
iridium
周期表第9族に属し、白金族元素の一つ。1804年イギリスのS・テナントによって発見された。
その塩類の水溶液が多様な色を呈することから、ギリシア神話の虹(にじ)の女神イリスIrisにちなんで命名された。白金鉱の中に天然合金(イリドスミン)または遊離の形で存在するが、硫化銅や硫化ニッケル鉱石中にも微量含まれる。白金鉱あるいは銅・ニッケル電解精錬時の陽極泥を王水処理したあと、その不溶性残渣(ざんさ)からハロゲノ錯塩として分離される。これを水素気流中で熱すると、次のような反応によって純粋な金属イリジウムが得られる。
[鳥居泰男]
銀白色の金属。硬くてもろく、加工性に乏しい。硬いことと融点が高いことでは白金族中オスミウムに次ぐ。またその比重は実存する物質中もっとも大きい。質量数185から198にわたり多くの放射性同位体が存在する。典型的な貴金属で、塊状のものはすべての酸に不溶で、王水にさえおかされない。粉状にして初めて王水に溶ける。空気中で800℃から酸化し始めるが、高温では酸化物が分解するので、1140℃以上では酸化されない。水酸化アルカリとは融解状態でも反応しないが、融解した二硫酸カリウムや硝酸カリウムには溶ける。赤熱状態でフッ素、塩素と容易に反応する。化合物中では1、3、4その他多くの酸化状態をとる。
[鳥居泰男]
純イリジウムは分析用、高温反応用るつぼ、高溶融点ガラスの押し出し用ダイスなど特別の用途がある。主要な需要は白金との合金で、装身具、外科手術用の針、旋回軸、電気接点などに用いられる。メートル原器も10%イリジウム合金である。オスミウムとの合金は万年筆のペン先として普及している。
[鳥居泰男]
イリジウム(データノート)
いりじうむでーたのーと
イリジウム
元素記号 Ir
原子番号 77
原子量 192.22
融点 2447℃
沸点 4527℃
比重 22.42(測定温度17℃)
結晶系 立方
元素存在度 宇宙 (Si106個当りの原子数)
0.43(第58位)
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
イリジウム
iridium
周期表第 Ⅷ 族に属する白金族元素の一つ。1804年イギリスのテナントS.Tennantにより白金鉱から発見され,その化合物がいろいろな色調を示すことから,ギリシア語のiris(虹)にちなんで命名された。白金鉱中にオスミウムと合金イリドスミンをつくって存在する。地殻中の存在度は1×10⁻3ppm。希元素の一つ。
性質
鋼白色で,ひじょうにかたく(モース硬度6.5),もろい金属。王水にも溶けないほど酸に強い。加圧酸素または過塩素酸ナトリウムが共存すれば,加熱によって濃塩酸に溶ける。空気中で熱すると二酸化イリジウムIrO2(黒色)を生じ(800℃),これがさらに高温で揮発し(1000℃),ついには成分に分解する(1500℃以上)。化合物には酸化物,ハロゲン化物,錯体などがある。バスカ錯体[IrIClCO(PPh3)2](Ph=C6H5-)は有名である。
製法・用途
銅やニッケルを鉱石から電解精錬によって取る工程で得られる副生物から,他の白金族元素とともに取り出される。白金との合金は,かたくて酸に強いことなどのため,電極,電気接点,ピボットなどに使われ,オスミウムとの合金は万年筆のペン先に使われる。
執筆者:柴田 村治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イリジウム
イリジウム
iridium
Ir.原子番号77の元素.電子配置[Xe]4f 145d76s2の周期表9族(白金族)貴金属元素.元素名は,イリジウム化合物の多彩な色彩から虹の女神を意味するギリシア語Ιρι(Iris)から命名された.宇田川榕菴は天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で,意利胄母(イリヂュウム)としている.原子量192.217(3).質量数191(37.3(2)%),193(62.7(2)%)の安定同位体のほか,質量数164~198の放射性同位体が知られている.1804年,S. Tennantが発見.白金鉱中に単体あるいは合金として存在する.
地殻中の存在度0.0001 ppm.ニッケルや銅の製造の際に副産物として得られる.銀白色のもろい金属.融点2410 ℃,沸点約4130 ℃.密度22.67 g cm-3(20 ℃).硬さ6.5.標準電極電位 Ir3+/Ir 1.156 V.第一イオン化エネルギー9.02 eV.酸化数1~4.ロジウム同様耐酸性が大きく,粉末にしないと王水にも溶けない.イリジウム海綿は水素を吸収する.高温では酸化物は揮発性を示す.Irの多い地層は宇宙物質起源のものを含むと考えられている.白金族元素との合金として利用される.オスミウムとの合金イリドスミンは万年筆のペン先に利用されている.石油改質触媒に白金とともに用いられる.半導体結晶生成用のるつぼ材,自動車用点火プラグ材料に用いられる.192Ir は非破壊検査用γ線源.白金との合金はかつてメートル原器に用いられた.[CAS 7439-88-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
イリジウム[通信]
イリジウム[つうしん]
アメリカ合衆国のモトローラが中心となって推進した地球的規模の移動体通信網。66個の通信衛星を結んだ低軌道周回衛星通信で,衛星携帯電話を使って世界中のどこからでも通信ができることをうたった。初め 77個の衛星を計画,原子番号 77の元素がイリジウムであることからイリジウム計画と名づけられた。アメリカでは 1998年からモトローラの関連会社イリジウム社がサービスを始め,日本では 1999年日本イリジウムによりサービスが開始された。しかし地上波系の携帯電話に比べて端末が重く,1台 30~40万円と高額であったことと,携帯電話加入者数が飛躍的に増加したため,衛星電話サービスの利用者数は当初の見込みを大幅に下回る結果となり,2000年3月事業そのものが破綻,サービスは廃止された。その後,アメリカではイリジウムサテライト(のちイリジウムコミュニケーションズに名称変更)が事業を引き継ぎ,2001年サービスを再開。2007年には次世代衛星通信ネットワーク計画であるイリジウムネクストを発表した。日本では KDDI(→ケイディディ)が 2005年にサービスを開始した。
イリジウム
iridium
元素記号 Ir,原子番号 77,原子量 192.217。天然には安定同位体イリジウム 193(存在比 62.7%)と 191(37.3%)が存在する。周期表9族,白金族元素の一つ。単体は銀白の金属で,等軸晶系に属する。比重 22.4,融点 2454℃,沸点約 4800℃。延性に乏しく,もろい。普通 3,4価の陽イオンをつくる。空気中 800℃で酸化し,酸化イリジウム IrO2を生じる。鉱酸,融解水酸化アルカリにおかされず,粉末のみ王水と反応する。白金の硬度を増すため白金に添加される。白金るつぼなど理化学器械の製作に用いられる。1804年 S.テナントが発見。オスミリジウム,イリドスミンが主要鉱石である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
イリジウム
元素記号はIr。原子番号77,原子量192.217。融点2443℃,沸点4437℃。白金族元素の一つ。1804年S.テナントが発見。ギリシア神話のイリスにちなんで命名。単体は銀白色の貴金属。延性に乏しくもろい。空気中で酸化されにくく,酸,アルカリに侵されない。オスミウムとの合金(イリドスミン)は万年筆のペン先に,白金との合金はメートル原器や理化学用器械,電極,接点などに用いられる。白金鉱や金鉱中に微量存在。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
イリジウム
通信衛星を利用した携帯電話のシステム。世界中のどこからでも通話できる。1999年にサービスが開始されたが、高額の使用料やCDMAなどの携帯電話システムが実用化されたことで、2000年3月に事業を停止した。
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報