平安末期の天台宗の僧。俗姓は橘(たちばな)氏。谷阿闍梨(たにあじゃり)とも称する。叡山(えいざん)で静真(じょうしん)に就き、鎮西(ちんぜい)(九州)へ赴いて景雲(けいうん)に就いて密教を学ぶ。寂昭(じゃくしょう)(寂照)とともに入宋(にっそう)せんとしたが、八幡大神(はちまんおおかみ)の使いである鳩(はと)数千羽に止められて断念、脊振(せふり)山で延殷(えんいん)(968―1050)とともに修行した。のち丹波(たんば)(京都府)池上に庵居(あんきょ)し、法興院十禅師(ほうこういんじゅうぜんじ)に任ぜられた。付法(法を伝えた弟子)30余人といわれ、なかでも長宴(ちょうえん)(1016―1081)、院尊(いんそん)、安慶(あんけい)がもっとも傑出し、その法流を「谷流(たにのりゅう)」と称する。檀那院覚運(だんないんかくうん)も年長ながら参じた。永承(えいしょう)4年7月26日、叡山東塔に寂した。『灌頂随要記(かんじょうずいようき)』2巻、『胎蔵道場観私記(たいぞうどうじょうかんしき)』『護摩私記(ごましき)』などの著がある。
[中尾良信 2017年7月19日]
(三橋正)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
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