改訂新版 世界大百科事典 「目的税普通税」の意味・わかりやすい解説
目的税・普通税 (もくてきぜいふつうぜい)
租税収入は,各種の公共財・サービスの提供や所得の移転のようなその他の活動のために使われるが,ある種の税に対しては支出目的があらかじめ指定されている。このように特定の支出目的のためにその税収が支出されることになっている租税を目的税といい,その税収が他の収入といっしょにされて,いろいろな支出目的のために使われる税を普通税という。目的税は,直接的に料金を徴収することが技術的に困難ではあるが,便益との対応が明確であるような公共財・サービスの資金調達には向いている。たとえば,一般道路の使用料の徴収はきわめて難しいから,自動車燃料の揮発油に課税したり(揮発油税),自動車の取得に課税する(自動車取得税)ことにより,主として道路から便益を得ている自動車利用者から道路の使用料の代りに目的税を徴収することが正当化される。この種の税は,典型的な利益説にもとづく税といえる。目的税の長所は,便益と負担との対応が比較的明確であることで,資源の最適配分の要請にかなうものであるが,他方,他の一般税との関係でいえば,国全体における優先順位にかかわらず,ただ財源があるというだけの理由で,たとえば道路が過剰に建設されるという短所もある。
執筆者:林 正寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報