省察録(読み)せいさつろく[デカルト](その他表記)Meditationes de prima philosophia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「省察録」の意味・わかりやすい解説

省察録[デカルト]
せいさつろく[デカルト]
Meditationes de prima philosophia

デカルト形而上学における主著。正式には『第一哲学に関する諸省察』という。ラテン語本文は 1640年4月完成し,41年8月パリで初版を出した。これには6編の駁論答弁が添えられている。 42年アムステルダムで再版が出され,これには新たに第7の駁論と答弁が添えられた。仏訳は少くとも第5の駁論と答弁を除いては著者自身が目を通したうえで 47年パリで出版された (第7の駁論と答弁は 1661年) 。本文は6つの省察より成り,1つずつが1日の省察という黙想録ないし日記のような形式で書かれ,著者は読者に十分な時間をかけてともに省察して思索の歩みをみずからたどることを求めている。第1省察で方法的懐疑のだいたいが示され,以下考えるわれの存在とその諸性質,神の存在,真と偽に関する判断論,物体本性と神の存在証明,物体の存在と心身区別主題とされる。この精神から神へ,神から物体への上がって下がる構成のなかに,近世哲学礎石となった幾多の理論が盛りこまれている。

省察録[マルクス・アウレリウス]
せいさつろく[マルクス・アウレリウス]
Tōn eis heauton biblia

自省録』ともいう。 12巻。ストアの学徒としてローマ皇帝地位についたマルクス・アウレリウスは,元奴隷であったストアの哲人エピクテトスの戒めを心に銘じつつ,心の底まで皇帝となりきらぬよう常にみずからを顧みローマにあるときも,ゲルマン人を討つべく出陣したその陣営にあるときも,自戒の言葉をギリシア語で綴り続けた。そこには一切のものは絶えず生々流転し,人生も戦いにして過客の一時 (いっとき) の滞在にすぎない,われわれを守り導くものはただ哲学のみであり,その導きに従って自然の本性にかなった生活をおくることがわれわれにとって最もよきことであり,救いであるという彼の信念が強く現れている。

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