日本大百科全書(ニッポニカ) 「眼外傷」の意味・わかりやすい解説
眼外傷
がんがいしょう
いわゆる目のけがで、原因別にみると薬物外傷をはじめ、異物、刺創(しそう)や切創、打撲などがある。また、外傷の場所が瞼(まぶた)か眼球か、あるいは骨かなどにより予後や治療が著しく異なる。
薬物による眼外傷には酸やアルカリによるものなどいろいろあるが、なによりもすぐに水道の水でよく洗い流すことが先決である。とくにアルカリは、のちに腐食が進んで失明に至ることもあり、何十分かけてもその場ですぐ入念に洗い流してしまうことが、もっともたいせつである。
異物による眼外傷の場合は、まず瞼や結膜(しろめ)についた異物は消毒したガーゼなどでそっととるか、水で洗い流す。角膜(くろめ)についたり、刺さった異物は眼科医にとってもらう。また、眼球内に飛び込んだ異物は手術によってとることになる。刺さったものや突いたものの先が折れて残っていないかどうか慎重に調べる必要がある。
刺創や切創による眼外傷の場合、瞼の創(きず)はひどく出血するが、厚く重ねたガーゼで15分ほど押さえておけばほとんど止血する。よく血を止めてから眼科か形成外科で縫合してもらう。結膜の創は化膿(かのう)さえしなければ縫わなくてもよいくらいよく癒合する。角膜や強膜が切れたら失明の可能性があり、いじらないでそのまま眼科医のもとまで運ぶ。体を揺すったり、顔を動かしたり、目を圧迫したりしてはならない。眼球の内容物が流れ出してしまうからである。予後は創の場所、大きさ、深さによって異なる。創を受けなかったほうの目にも炎症をおこす交感性眼炎に注意しなければならない。
打撲による眼外傷の場合、まず目を打ったとき視力に気をつける。視力が下がって見えにくいときは、ただちに眼科医へ行く。鼻出血を伴うときも同じである。すなわち、前房出血、網膜しんとう症、外傷性虹彩(こうさい)炎、虹彩離断、水晶体脱臼(だっきゅう)、眼球破裂、眼窩(がんか)底吹き抜け骨折、視神経管骨折などがあるからである。
[大島 崇]