交感性眼炎(読み)こうかんせいがんえん(英語表記)Sympathetic ophthalmia

六訂版 家庭医学大全科 「交感性眼炎」の解説

交感性眼炎
こうかんせいがんえん
Sympathetic ophthalmia
(眼の病気)

どんな病気か

 ぶどう膜が損傷するような外傷を受けた人のなかで、受傷したほうの眼だけでなくその反対の眼にも炎症が起こることがあります。両眼視力低下を来すため、古くから恐れられている疾患です。まれに手術後に起こることもあります。

原因は何か

 色素細胞が、外傷をきっかけに免疫系にさらされることにより、色素に富んだぶどう膜に対する自己免疫反応が起こると考えられています。色素細胞に対する自己免疫反応という意味では、原田病と同じ病態であり、経過も似ていますが、外傷がきっかけになる点で区別されます。

症状の現れ方

 原田病とほぼ同様の症状を示します。

検査と診断

 原田病と同様に蛍光(けいこう)眼底造影検査や髄液(ずいえき)検査が重要です。血液検査では、白血球の増多、赤沈の亢進、CRP陽性化などの炎症性の反応がみられます。また、白血球の血液型である組織適合抗原HLA)のなかで、DR4あるいはDR53をもった人によく発症することも原田病と同様です。

治療の方法

 原田病治療に準じて、ステロイド薬の大量点滴あるいはパルス療法が行われます。免疫抑制薬が使われる場合もあります。穿孔性(せんこうせい)(あな)があく)の眼の外傷を受けた人で、遺伝的素因がある場合(HLA­DR4、DR53など)には、十分な経過観察が必要です。

 受傷した眼の視機能の回復がまったく期待できない場合には、本症の発症を予防するために、受傷した眼球摘出することもあります。

病気に気づいたらどうする

 治療の開始時期が遅れると視力の回復が望めない場合もあるので、早めに治療を受けることが重要です。

関連項目

 原田病

河本 知栄, 喜多 美穂里

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「交感性眼炎」の解説

こうかんせいがんえん【交感性眼炎 Sympathetic Ophthalmia】

[どんな病気か]
 片方の目のけがや手術によって、虹彩こうさい)、毛様体(もうようたい)、脈絡膜(みゃくらくまく)などのぶどう膜が、傷口から外界にさらされて炎症をおこした後、1か月あるいはそれ以上たって、反対側の健康な目に、原田病(「原田病(フォークト・小柳・原田病)」)とまったく同じ症状をおこす病気です。
[治療]
 かつては、交感性眼炎の恐れがある場合や、健康な目に炎症がおこった場合は、けがをしたほうの目を摘出していました。しかし、原田病に準じたステロイド大量療法によって、眼球摘出を行なうことなしに治療できるようになっています。目のけがをした後は、眼科医の指示に従って、受傷していない目の定期的なチェックも必要で、異常を感じた場合はすみやかに眼科医の診察を受けてください。

出典 小学館家庭医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「交感性眼炎」の意味・わかりやすい解説

交感性眼炎
こうかんせいがんえん

一方の眼球が穿孔(せんこう)性外傷を受け、ぶどう膜が多量に損傷すると、多くは3~4週間(1年以内が90%)後に受傷眼のみならず非受傷眼にも原田病(ぶどう膜ばかりでなく、内耳、髄膜、皮膚、毛髪などが侵される全身病)に似た症状の現れることがある。これを交感性眼炎といい、受傷眼を起交感眼、他眼を被交感眼という。白内障や緑内障などの術後にもまれにおこる。受傷眼が化膿(かのう)すると交感性眼炎はおきない。発症は、外傷により障害されたぶどう膜色素(メラノサイト)に対して自己免疫機序が働くためと考えられている。受傷直後に手術用顕微鏡を使って傷口を完全に閉鎖すると、かなり予防できる。治療は早期発見と早期ステロイド療法であるが、やむをえず起交感眼の摘出を行うこともある。

[小暮美津子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「交感性眼炎」の意味・わかりやすい解説

交感性眼炎
こうかんせいがんえん
sympathetic ophthalmia

一方の眼球に穿孔性外傷を受け,ブドウ膜が強く侵されたとき,受傷後約1ヵ月を経て健眼にも急性びまん性ブドウ膜炎が起る現象をいう。この場合,外傷を受けた眼を第1眼または起交感眼といい,他眼を第2眼または被交感眼という。受傷1ヵ月後に第1眼の炎症が再発,悪化すると同時に,他眼に軽い羞明,視力減退,毛様充血などの症状が出現し,重症の場合には線維素性ブドウ膜炎の症状が出る。古くは第1眼の早期摘出が最良の治療法といわれていたが,近年は,副腎皮質ホルモン剤の全身投与により,眼球摘出をせずに軽快する例が多くなってきている。

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世界大百科事典(旧版)内の交感性眼炎の言及

【ぶどう膜(葡萄膜)】より

…なおベーチェット病と原田病は,人種間で発症頻度の異なるぶどう膜炎として知られ,日本では高率にみられる疾患である。
[交感性眼炎sympathetic ophthalmia]
 片方の眼に穿孔(せんこう)性の外傷をうけたあと(起交感眼),他眼(被交感眼)とともに発症する両眼性ぶどう膜炎。とくにぶどう膜に対する損傷の結果,ぶどう膜を抗原とするアレルギー反応が原因で起こる。…

※「交感性眼炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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