改訂新版 世界大百科事典 「知行宛行状」の意味・わかりやすい解説
知行宛行状 (ちぎょうあてがいじょう)
主君から家臣に与えた,知行の割当てを示しその知行の権利を保証した文書。その内容は,鎌倉時代の職の補任から江戸時代の石高所領の給付に至るまで種々であるが,知行宛行は武家社会での主従関係のかなめをなすものであるから,各時代にわたって知行宛行状には恒久的効力を保証する,最も重みのある文書形式が用いられた。
鎌倉時代では将軍の袖判下文(くだしぶみ)ないし幕府政所下文が,室町時代では将軍の発する御判御教書(みぎようしよ)(袖判御教書)が,戦国時代には大名の判物(はんもつ)ないし印判状が用いられた。江戸時代になると,将軍が大名に対して所領を宛行うものは領知朱印状と呼ばれ,知行宛行状というときには将軍が旗本に,また各大名が自己の家臣に対して発給するものを指す。将軍が旗本に発する知行宛行状は朱印状の形式であり,徳川氏の関東入部以降,寛永期(1624-44)にかけて出されている。諸藩では大名から家臣への宛行状は判物や黒印状でなされ,折紙形式のものが多い。諸藩では戦功や新規召抱えによるもののほかに,転封による知行割にあたっても知行宛行状が発給された。
執筆者:笠谷 和比古
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報