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下文 くだしぶみ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

下文
くだしぶみ

古文書様式の一つ。冒頭に「甲下す乙」とある下達文書。公式令 (くしきりょう) 規定外の新様式文書で,この様式のものとしては弁官下文 (官宣旨) が最も早く,その初見は,現在のところ貞観 11 (869) 年のもの。発令者と受令者との関係が端的に表わされていること,発布手続が公式令の煩雑な規定に拘束されないことなどから,蔵人所など令外官官庁をはじめ,院庁などで広く用いられ,さらに摂関家以下公卿あるいは大社寺の政所 (まんどころ) からも下文を出した。下文は武家に継承され,鎌倉時代から南北朝時代にかけて最も格の高い文書として用いられたが,次第に御教書 (みぎょうしょ) に取って代られ,室町幕府では3代将軍足利義満の頃から御判始吉書として出される場合を除いて用いられなくなった。

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百科事典マイペディアの解説

下文【くだしぶみ】

11―13世紀に多用された下達文書。律令政治で使用された〈(ふ)〉にかわって,手続きを簡略化し,文書作成担当者から直接下達した文書。9世紀に弁官(べんかん)下文が初出。
→関連項目安堵状掟書官宣旨蔵人下知状古文書雀部荘知行宛行状

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世界大百科事典 第2版の解説

くだしぶみ【下文】

11~13世紀に荘園領主官司が荘園公領在地や地下(じげ)を支配するため盛んに使用した下達文書。8世紀から10世紀までの律令政治において,所管の官司から被管の官司へ下達する文書としては符が用いられていたが,符の発給にあたっては,官司印の請印授受の儀式など厳格な手続を必要とし,緊急を要する事項あるいは軽易な事項については,ふつごうで煩わしいものであった。そこで文書作成担当者から直接下達する文書として開発されたのが下文である。

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大辞林 第三版の解説

くだしぶみ【下文】

上位者の意志を下位者に伝える公文書。冒頭に「下」と書き、普通は、その下にあて先を記す。院庁下文・摂関家政所まんどころ下文・将軍家政所下文など、平安・鎌倉時代に多く用いられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

下文
くだしぶみ

古文書の一形式。上位者が、支配下にある役所や家臣、人民あてに出した文書で、書出しに「下(くだす)」と書くのが特徴。古くは本文の書留めも「故下(ことさらにくだす)」「以下(もってくだす)」などとした。公式令(くしきりょう)に定められた下達文書は符(ふ)と牒(ちょう)であったが、平安時代には、太政官符(だいじょうかんぷ)よりも手続の簡単な弁官(べんかん)下文(官宣旨(かんせんじ))が多く使用されるようになった。こののち令外(りょうげ)の役所である蔵人所(くろうどどころ)や検非違使庁(けびいしのちょう)や、院庁、摂関家(せっかんけ)をはじめとする公卿(くぎょう)、社寺などでも下文を出すようになった。
 鎌倉幕府でも、源頼朝(よりとも)の例に従い、知行(ちぎょう)の充行(あておこな)い、安堵(あんど)など重要な事柄には下文を用い、将軍の位階が低いときには袖判(そではん)の下文、三位(さんみ)に進むと政所(まんどころ)下文を発行する慣習であった。親王将軍の時代は、当初から政所下文を用いた。室町時代、足利(あしかが)将軍も下文を発給したが、政所下文は用いず、3代将軍義満(よしみつ)ののちはほとんど使わなくなった。将軍以外の武家では、鎌倉時代の北条氏、室町時代の周防(すおう)大内氏などが下文を出している。[百瀬今朝雄]

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世界大百科事典内の下文の言及

【公家様文書】より

…その淵源は二つに分けられる。一つは奈良時代に,仰せ,命令の意で広く用いられていた宣の系譜を引く内侍宣(ないしせん),宣旨(せんじ),口宣案(くぜんあん),官宣旨(弁官下文),国司庁宣,大府宣などである。内侍宣は,天皇に近侍して奏宣をつかさどる内侍司の女官が天皇の仰せを伝えるものであるが,薬子の変を機に蔵人所が置かれ(810),蔵人が天皇の仰せを,太政官の上卿に伝えるようになった。…

【古文書】より


[分類と様式]
 古文書の内容理解のため,その整理保存のため,その他種々の目的のために,古文書の分類ははやくから行われている。もっとも古典的なものとして,(1)差出人と受取人の関係によって上逮下(下達)文書,下達上(上申)文書,相互(互通)文書という分類方法がある。つぎに(2)国内文書と国際(外交)文書に大別し,前者をさらに公文書,準公文書,私文書に分類する。…

※「下文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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