石龕寺(読み)せきがんじ

日本歴史地名大系 「石龕寺」の解説

石龕寺
せきがんじ

[現在地名]山南町岩屋

岩屋いわや山中を流れる岩屋川の谷奥に位置し、三方を急峻な断崖に囲まれた要害の地にある。高野山真言宗本尊観音菩薩。山号は岩屋山で中世以前には岩屋寺とも称し(永享一〇年三月二一日「岩屋寺西方院引檀那願文」熊野本宮大社文書など)、修験道とも結びつきが強く、岩屋山頂(四二六メートル)近くにある石窟と尾根筋が主要な信仰と修行の場となっていた。もとは石窟前の断崖面に本堂があったと伝承されている。享保一六年(一七三一)の石龕寺略縁起(寺蔵)によると、用明天皇二年に聖徳太子が自刻の毘沙門天像を山頂の石窟内に祀ったのを起源とする。毘沙門天の霊験あらたかなるを聞及んだ村上天皇も諸堂を造立、当寺は小野道風の筆によるという寺号額を下賜されるなど手厚い庇護を受けたと伝える。山門内の木造金剛力士像は肥後法橋定慶の作で胎内に仁治三年(一二四二)四月の作銘と、寛文一〇年(一六七〇)の修理銘を有し、阿・吽形像とも国の重要文化財に指定されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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