硫化モリブデン(読み)りゅうかモリブデン(英語表記)molybdenum sulfide

  • 硫化モリブデン molybdenum sulfide

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

(1) 硫化モリブデン (IV) ,二硫化モリブデン  MoS2 。最もよく知られている硫化物で,天然には輝水鉛鉱 (主要鉱石) として産出する。鉛灰色光沢ある粉末比重 5.06,融点 2375℃。 450℃で昇華を始める。水および希酸に不溶。潤滑剤,水素添加触媒などに用いられる。
(2) 硫化モリブデン (III) ,三二硫化モリブデン  Mo2S3 。灰色葉状晶。希酸,希王水に不溶。比重 5.9。

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世界大百科事典 第2版の解説

モリブデンと硫黄化合物総称で,確実なものとしてはモリブデンの酸化数III,IV,VIの化合物が知られており,Vの化合物も存在するとされている。MoS3に硫化水素を作用させて得られる黒色粉末MoS4はポリ硫化物Mo(S2)2であるとされている。
[硫化モリブデン(III)]
 化学式Mo2S3。モリブデンと硫黄をモル比2.06:3に混合し,真空中1300℃で60時間加熱してから急冷すると得られる。鋼灰色葉状晶。

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化学辞典 第2版の解説

MoS2,MoS3,MoS4,Mo2S3,Mo2S5,Mo3S4などが知られている.【】二硫化モリブデン:MoS2(160.072).天然に輝水鉛鉱として存在する.モリブデンと計算量の硫黄の直接反応,MoS3をH2S中で加熱,またはMoS3を硫黄と炭酸カリウムの混合物で融解すると得られる.黒色粉末または六方晶系の結晶.密度5.06 g cm-3.融点1185 ℃.半導体,反磁性,高温でもっとも安定な硫化物.王水,沸騰した濃硫酸には溶けるが,酸化力のない酸,アンモニアには侵されない.6個のS原子を頂点とする三角柱型構造のなかに,Mo原子を取り込んだ構造が連なって層状格子をつくっていて,層がすべりやすく,グラファイト(黒鉛)のような機械的性質を示す.高温用潤滑剤で,自動車用エンジンオイル,ギヤオイル,グリースなどに多用される.水素化脱硫触媒として石油産業でも重要である.[CAS 1317-33-5]【】三硫化モリブデン:MoS3(192.1).黒色の固体.モリブデン酸塩の弱酸性溶液にH2Sを通じると沈殿する.褐色の粉末.水に不溶.硫化アルカリ溶液で温浸すると溶けて,赤褐色のチオモリブデン酸塩となる.[CAS 12033-29-3]【】三硫化二モリブデン:Mo2S3(288.078).融点1807 ℃,沸点1867 ℃.密度5.91 g cm-3.[CAS 12033-33-9]【】五硫化二モリブデン:Mo2S5,Moの硫酸酸性溶液を亜鉛で還元し,H2Sを通じるとMo2S3の沈殿が生じ,これをCO2気流中で熱するとMo2S5粉末が得られるとされているが,きわめて酸化されやすく確実には分離されてはいない.[CAS 12033-34-0]

このほか,四硫化モリブデンMoS4[CAS 12136-77-5],四硫化三モリブデンMo3S4[CAS 39432-48-9]などがある.「モリブデン及びその化合物」としてPRTR法・第一種指定化学物質 経口慢性毒性クラス3,労働安全衛生法〔名称等表示〕名称等を通知すべき有害物.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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