操り人形の一種。また人形をまねた踊り。宇治加賀掾の元禄(1688-1704)ころの浄瑠璃《義経追善女舞》に,手妻(てづま)人形を碁盤の上で遣ったことがみえるが,そのはじまりは不明。江戸でも同じ元禄期に小山次郎三郎が碁盤人形を得意とし,碁盤操り,浄瑠璃碁盤人形と称して上演したことが,《松平大和守日記》にみえる。これが歌舞伎にも入り,子ども役者が碁盤の上で踊りをみせ,また座敷芸ともなった。元禄の篠塚庄松,宝永(1704-11)の篠塚菊松などが有名で,奴踊を碁盤の上で踊る絵ものこっている。また,歌舞伎役者で所作事の上手であった佐渡嶋長五郎は,5歳のときから碁盤人形で人気を博し,9歳まで踊ったと《佐渡嶋日記》にみえる。明治期に高座で落語家が踊ったことがあり,2代三遊亭円三郎の《紺の前垂》や桂扇枝の《松尽し》が有名。京都の祇園では子どもの舞妓を碁盤人形と呼ぶことがあった。
執筆者:板谷 徹
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