改訂新版 世界大百科事典 「磁気異常」の意味・わかりやすい解説
磁気異常 (じきいじょう)
geomagnetic anomaly
地球内部に原因をもつ地球磁場(地磁気)には,核内でのダイナモ作用に起因する地球全体としての大きなもののほかに,もっと狭い地域に特有なものがあり,後者を磁気異常と呼んでいる。磁鉄鉱のような磁性鉱物を多く含んだ岩体に伴って現れ,それが冷却するとき地球磁場により磁化されたり,岩体の地球磁場内での誘導磁化などによって磁化され(自然残留磁気),磁気異常の原因となっている。海洋で観測される縞状磁気異常は前者のよい例である。また,火山,岩脈なども磁気異常を伴うので,その観測は資源探査に使われる(磁気探査)。物質が磁性を失う温度をキュリー温度と呼ぶが,地下の温度がキュリー温度をこすとそこの物質は磁化しないことを利用して,磁気異常から地下の温度を推定する試みもなされている。また,人工衛星による磁気探査から,波長が100km以上もあるような大スケールの磁気異常が地球全体について測られるようにもなってきた。しかし,これについては,その原因がまだよくわかっていない。磁気異常と呼んでもよいような小スケールの磁気は月面上でも観測されている。
執筆者:柳沢 正久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報