磁気探査(読み)ジキタンサ(英語表記)magnetic prospecting
magnetic survey

デジタル大辞泉 「磁気探査」の意味・読み・例文・類語

じき‐たんさ【磁気探査】

地磁気の異常を測定し、磁鉄鉱チタン鉄鉱などの鉱床位置地質構造を推定する方法磁気探鉱

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「磁気探査」の意味・わかりやすい解説

磁気探査 (じきたんさ)
magnetic prospecting
magnetic survey

磁力探査ともいう。陸上,海上あるいは空中で地球磁場を測定し,これに基づいて地下の磁性体の分布を求め,地下の構造,岩質,資源などの様子を調べる物理探査の一方法。すなわち,測定磁気値から地球磁場を差し引いた磁気異常によって地下の磁性岩体の存在状態を知ろうとするものである。

地球の中心部は核(コア)と呼ばれ,鉄を主体として構成されており,核の電磁流動現象により地球が一つの巨大な磁石とみなせる時間的にほとんど変化しない磁場をつくっている。このほかに磁気あらしや日変化などの電離層に原因をもつ値そのものは小さいが時間的に変化する変動磁場があり,これらが地球磁場を形づくっている。地殻を構成する岩石は,それに含まれる磁鉄鉱などの磁性鉱物の量に応じた磁性を有し,これが地球磁場により誘導磁化される。誘導磁化は岩石の形,磁性および地球磁場の強さから決まり,磁性の強弱は磁化率で示される。また,岩石は現在の地球磁場には依存しない残留磁化を有していることがある。この誘導磁化と残留磁化との合成磁化が磁気異常をつくっている。

磁場はベクトル量であるが,磁気探査では通常磁場の強さを測定しており,この測定器を磁力計という。磁力計にはいろいろなタイプがあるが,探査によく用いられているのはプロトン磁力計である。プロトン磁力計は,磁場中に置かれたプロトンの歳差運動の周期がその磁場の強さに比例するという性質を用いたものであり,航空機船舶に搭載して精度よく磁場を測定することが可能である。磁気の強さの単位はテスラ(記号T)であり,探査においてはナノテスラ(記号nT。1nT=10⁻6T)が基本単位として用いられる。

測定磁気値より地球の核に起因する磁場および日変化等の変動磁場を差し引くと,地殻内の磁性岩体に起因する磁気異常が得られる。磁気はポテンシャル力であるため,磁性構造を与えるとそれによる磁気異常は計算により求めることができるが,逆に磁気異常からそれを発生している磁性構造は一義的には求めることができない。そのため,地質・物理探査等の既知情報を基に地下磁性構造の単純化・モデル化を行って磁気異常の解析を進める必要がある。解析方法には,磁気異常の振幅特性を利用したカーブマッチング法,周波数特性を利用したスペクトル法などがある。カーブマッチング法は,まず地下磁性構造をモデル化し,このモデル構造による磁気異常を計算する。計算磁気異常と観測磁気異常との振幅特性を比較し,差があればモデル構造を修正・変更する。このプロセスを繰り返し,両者の差が最小となるモデル構造が求める地下磁性構造となる。また,スペクトル法は,観測磁気異常のスペクトルを計算し,その周波数特性より地下磁性構造を求めるものである。この方法を拡張して,岩石がその磁性を失うキュリー温度相当深度を磁気異常から求めることも行われている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磁気探査」の意味・わかりやすい解説

磁気探査
じきたんさ
magnetic prospecting

磁力を利用した物理探査磁力計地磁気の強さを測定し,磁性の強い鉄鉱床や砂鉄鉱層などを検出する手法で,火山の地下構造や地殻構造の調査などにも広く活用される。磁力計による測定は地上だけでなく,航空機や調査船によって空中や海上でも行なわれる。また地雷探査や凶器探査にもこの手法が応用される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「磁気探査」の意味・わかりやすい解説

磁気探査【じきたんさ】

磁気探鉱とも。地下の磁性鉱床や磁性を帯びた岩石に基づく磁気異常を測定して,鉱床の位置や地質構造を推定する方法。地表に磁力計を置き局所的に測定する方法のほか,磁力計を飛行機に積む広域測定により油田地帯などの大地質構造の探査も行われる。
→関連項目磁気異常磁力計物理探査

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「磁気探査」の意味・わかりやすい解説

磁気探査
じきたんさ

物理探査

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の磁気探査の言及

【地質調査】より

…しかしながら,この推定を確かめたり,さらに深いところの状態を推定するためには,他の方法を用いなければならない。(1)物理探査 いろいろな地球物理学的手法を用いて行う調査方法であり,主として利用する物理量の違いによって方法が異なり,それぞれ,地震探査,重力探査,磁気探査,電気探査,放射能探査,地温探査,物理検層などと呼ばれている。(a)地震探査 地下の岩石や地層の中を波動として伝搬する弾性波の速度を測定することによって,地下構造を明らかにする調査で,古くから,自然発生地震によって地球の内部構造,とりわけ地殻やマントル上部の構造を明らかにするために用いられてきた方法である。…

※「磁気探査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android