翻訳|dike
板状の火成岩体で、その周囲にある地層の層理面や変成岩の面構造に斜交して貫入しているもの。ダイクともいう。一般的に急傾斜から垂直のものをさすことが多い。周囲の地層に層理面や片理面などの面構造が見られなかったり、面構造をもたない花崗岩(かこうがん)などに貫入したものも岩脈とよばれる。岩脈の幅は1~数十メートル、長さ数百メートル以下のものが多いが、幅数キロメートル、長さ100キロメートルも続く例もある。岩脈の英語であるdike、dykeは、本来は石塀・土塀という意味である。これは、幅2~3メートルでほぼ垂直な岩脈がある場合、周囲の堆積(たいせき)岩よりも岩脈のほうが侵食に対して強いため石塀のような形で侵食されずに残っていることがあり、これが地質用語に転用されたことによる。和歌山県串本(くしもと)町の橋杭岩(はしぐいいわ)は、石英斑岩(せきえいはんがん)のほぼ垂直な岩脈が熊野層群の泥岩に貫入し、泥岩よりも侵食に対して強いために、橋の杭が直線状に連なったように残ったものである。
岩脈は、周囲の岩石にできた割れ目を押し広げてマグマが貫入し、冷却・固結して形成された火成岩である。そのため、岩脈の両壁は平行であることが多いが、先端部ではくさび状に先細りになっていたり、二つに枝分かれしていることがある。また、岩脈の先端が地上に噴出した溶岩に移行することがある。板状の岩脈の周縁部は、堆積岩に接し急激に冷却されるため、結晶が成長できずにガラス質であったり、岩脈中央部に比べて細粒であったりする。この細粒な周縁部は急冷周縁相とよばれる。また、岩脈内には、境界に対して垂直に延びた柱状節理が形成されることが多い。厚い岩脈の場合には、周囲の岩石の狭い部分に熱変成作用を及ぼすことがある。異なった成分をもつマグマが連続して貫入することによってできたものが複合岩脈composite dikeである。一方、同じ成分をもつマグマが冷却時間をおいて複数回にわたって貫入したものが重複岩脈multiple dikeである。
マグマの貫入した割れ目の形態に応じて、平行岩脈群、放射状岩脈群、環状岩脈などに分類される。岩脈は火成岩体のため、火成岩岩石学の分野で扱われることが多いが、マグマは割れ目に貫入するため、割れ目(破断)を扱う構造地質学の研究対象でもある。岩脈が形成されるためには、既存の割れ目があるか、あるいは新たに割れ目が形成され、その割れ目を押し広げるほどにマグマの圧力が高まることが必要になる。火山を中心にして放射状岩脈が形成されるのは、マグマが高い圧力で上昇してくるため、放射状の割れ目が形成され、そこにマグマが貫入するためである。広い範囲に多くの岩脈が形成されている場合、岩脈形成時の広域応力場を求めることができる。これは、板状の岩脈に垂直な方向が最小主応力軸、岩脈に平行な面内に最大・中間主応力軸が存在するため、垂直に近い岩脈の走向を測定すると、その方向が最大水平圧縮主応力軸として求められる。この手法は岩脈法とよばれ、岩脈形成時の広域応力場の推定に用いられている。
マグマが貫入するのではなく、地震動で液状化した砂・泥などが周囲の堆積層などに貫入することがあり、これらは砕屑(さいせつ)岩脈あるいは堆積岩脈とよばれる。
[村田明広]
垂直に近い板状貫入岩体。直立していないものは岩床という。岩脈は通常,幅1~数十m,長さ数百m以下のものが多いが,ときに数百kmにわたって連続しているものがある。岩脈には両壁に垂直な板状節理や,両壁に接し急冷周縁相が発達している。いろんな種類の火成岩が岩脈をつくる。とくに風化につよい岩脈では,岩脈部が小高い連続丘となってつづくことがある。岩脈はその貫入状態によって次に示すいくつかの種類に分けられている。
(1)複合岩脈composite dike 異なる組成のマグマが高温状態で連続的に貫入して生じた岩脈。二つ以上の異なる岩型の部分からなるが,その境は漸移している。(2)重複岩脈multiple dike 2回以上の貫入時期が区別される岩脈。最初の岩脈が貫入して冷却した後,次の岩脈が貫入したもの。したがって複数の岩脈が互いに接する部分には,急冷周縁相がみられる。(3)環状岩脈ring dike マグマだまりのなかの圧力が減少し,そのため周囲の岩石に下方に向かって開いた円筒形の割れ目群が生じ,そこにマグマが貫入したものである。(4)平行岩脈群dike swarm ほぼ平行に配列した多数の岩脈の群。スコットランドの第三紀火山地域には多くの平行岩脈群が発達している。(5)放射状岩脈群radial dikes 火道を中心として放射状にひろがる岩脈の群。開析された中心噴火の火山体によくみられる。
→火成岩
執筆者:諏訪 兼位
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