磁鉄鉱(読み)ジテッコウ(その他表記)magnetite

翻訳|magnetite

デジタル大辞泉 「磁鉄鉱」の意味・読み・例文・類語

じ‐てっこう〔‐テツクワウ〕【磁鉄鉱】

酸化物からなる鉱物黒色光沢があり、強い磁性をもつ。等軸晶系多く火成岩に副成分鉱物として含まれ、接触交代鉱床砂鉱床などに産する。主要な鉄鉱石マグネタイト

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精選版 日本国語大辞典 「磁鉄鉱」の意味・読み・例文・類語

じ‐てっこう‥テックヮウ【磁鉄鉱】

  1. 〘 名詞 〙 鉄の酸化物を主成分とする磁性の強い鉱物。少量のチタンマンガンなどを含み、黒色、等軸晶系。砂状、粒状、塊状などで正マグマ鉱床、接触鉱床などに、また河床などに砂鉄として産する。電気伝導性をもち、製鉄原料として重要。マグネタイト。磁鉄。〔鉱物字彙(1890)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「磁鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

磁鉄鉱
じてっこう
magnetite

酸化鉱物の一つで、スピネル族鉱物の一員。鉄の重要な鉱石鉱物。正マグマ性鉱床、変成鉱床、堆積(たいせき)鉱床、漂砂鉱床(いわゆる砂鉄)、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)中などに産するほか、各種火成岩、変成岩、堆積岩、超塩基性岩などの少量成分鉱物としても産する。まれにほとんど磁鉄鉱からなる溶岩の存在も報告されている。自形は八面体、斜方十二面体をはじめ複雑なものが多いが、結晶片岩や超塩基性岩中のものは単純、接触交代鉱床中のものは複雑という傾向がある。

 日本で鉱床として多産したものは接触交代鉱床が多く、岩手県の釜石(かまいし)鉱山(閉山)、奥州(おうしゅう)市江刺(えさし)区の赤金(あかがね)鉱山(閉山)、岡山県高梁(たかはし)市川上町山宝(さんぽう)鉱山(1999年金平(きんぴら)鉱山と合併し金平山宝鉱山と改称。備中町)などが有名である。鉄・銅などの硫化物を伴うことが多く、脈石鉱物として共存するものは、正マグマ性鉱床ではチタン鉄鉱、鉄苦土鉱物、蛇紋石など、変成鉱床では石英、角閃(かくせん)石、緑泥石、赤鉄鉱など、接触交代鉱床では方解石、緑簾(りょくれん)石、灰鉄(かいてつ)ざくろ石などである。強い磁性があるとされるが、純粋なものは磁性はない。

[加藤 昭 2017年5月19日]


磁鉄鉱(データノート)
じてっこうでーたのーと

磁鉄鉱
 英名    magnetite
 化学式   Fe2+Fe3+2O4
 少量成分  Mn,Mg,Ni,Ti,Cr,Al,V,Si
 結晶系   等軸
 硬度    5.5~6.5
 比重    5.20
 色     鉄黒
 光沢    金属
 条痕    黒
 劈開    無
       (「劈開」の項目を参照)
 その他   強磁性

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改訂新版 世界大百科事典 「磁鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

磁鉄鉱 (じてっこう)
magnetite

赤鉄鉱とともに鉄の重要な鉱石鉱物。化学組成はFe3O4でFe2⁺とFe3⁺を1:2のモル比で含んでいる。Fe2⁺はMg,Zn,Mn2⁺などによって置換され,Fe3⁺はAl,Cr,Mn3⁺,Vなどによって多少置換される。立方晶系。通常は正八面体,塊状,粒状でもろい。色は黒色ないし黒褐色。不透明,金属光沢。モース硬度5.5~6.5。比重5.175。条痕は黒色。鉱物中で最も強い磁性を示す。火成岩および変成岩の生成温度範囲の大部分で,安定な鉄の酸化鉱物は磁鉄鉱である。したがって,この鉱物は最も広くしかも多量に存在する酸化鉱物の一つである。また,磁鉄鉱は風化に強く,砂鉄鉱床を形成する。主要な産状は次の通りである。(1)火成岩の副成分鉱物として,(2)スウェーデンのキルナ型鉄鉱床,(3)アメリカのニューヨーク州,アディロンダックの斜長岩に伴う鉄・チタン鉱床,(4)接触交代型鉄・銅鉱床(岩手県釜石鉱山など),(5)種々の砂鉄鉱床。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磁鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

磁鉄鉱
じてっこう
magnetite

Fe3O4 。等軸晶系,鉄スピネル族の鉱物。マグネタイトともいう。結晶は八面体,十二面体,八面体と十二面体の集形など。普通小さい粒状,塊状をなす。硬度6,比重 5.18。金属光沢,鉄黒色,条痕黒,不透明。強い磁性を有し,天然磁石となる。マグネシウム,チタニウム ( TiO2 6%まで) ,マンガン (3.8~6.3%;マンガン磁鉄鉱) を含む。酸素中で加熱すれば 220℃で,赤色酸化鉄に変化するが,磁性や結晶構造に変化はない。 550℃で結晶構造が赤鉄鉱に変化し磁性も消失する。磁鉄鉱は大部分の火成岩中に副成分鉱物として散点的に産し,火成岩の接触変成帯に塊状をなして産する。海浜の黒砂には多くの磁鉄鉱粒が含まれている。点在する磁鉄鉱の結晶は結晶片岩中にも普通にみられ,古期の変成岩中に鉱層がレンズ状をなして産する。鉱床としては,接触交代鉱床などに産する。鉄の重要な鉱石鉱物。スウェーデンのキルナやイェリバレは世界最大の磁鉄鉱鉱床である。

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化学辞典 第2版 「磁鉄鉱」の解説

磁鉄鉱
ジテッコウ
magnetite

Fe3O4.ひし形十二面体または正八面体の結晶として,また粒状または塊状として産出する.立方晶系,空間群 Fd3m.格子定数 a0 = 0.834 nm.単位格子中に8個の基本組成が含まれる.密度5.2 g cm-3.硬度6.金属光沢で不透明,黒色,条痕も黒色.フェリ磁性が強い.鉱物のなかで最強の磁性体.密度が大きいうえに,風化作用に強いため,濃集・堆積して大きな鉱床となることが多い.また,砂鉄としても濃集する.赤鉄鉱とともに鉄の重要な鉱石である.

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百科事典マイペディア 「磁鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

磁鉄鉱【じてっこう】

重要な鉄の鉱石鉱物。金属光沢があり色は黒く強磁性をもつ。組成はFeO・Fe2O3だが,2価のFeがMg,Zn,Mnに,3価のFeがAl,Cr,Mnに置換されたものの少量と固溶体をなすことがある。等軸晶系,結晶は通常正八面体。硬度6,比重5.2。ほとんどすべての火成岩中に広く分布,接触交代鉱床や正マグマ鉱床から集中して産する。→砂鉄
→関連項目尖晶石鉄鉱石

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世界大百科事典(旧版)内の磁鉄鉱の言及

【鉄鉱石】より

…通常は高炉内に投入して酸化鉄に結合している酸素とその他の脈石分を取り除き,鉄分を溶けた状態の銑鉄として取り出し鋼の原料とする。鉄鉱石を鉱物学の観点から分類すると多種類にのぼるが,製鉄原料として用いられる天然鉱物は赤鉄鉱(ヘマタイト,α‐Fe2O3),磁鉄鉱(マグネタイト,Fe3O4),磁赤鉄鉱(マグヘマイト,γ‐Fe2O3),褐鉄鉱(リモナイト,Fe2O3nH2O,n=0.5~4)に代表される。とくに赤鉄鉱の産出量が全世界的にみて圧倒的に多く,日本への輸入鉄鉱石の中でもその約80%を占めている。…

※「磁鉄鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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