神霊祭祀(さいし)の施設。『日本書紀』巻2、天孫降臨章の一書に「天津神籬(あまつひもろぎ)及天津磐境云々」とあるのが唯一の記事で、『古語拾遺(こごしゅうい)』にも同文がみられる。その実態については二、三の説があるが、祀(まつ)りのため随時設けた小規模な石囲いの施設と推定される。考古学上、和歌山県白浜町坂田山遺跡、福岡県宗像(むなかた)郡沖ノ島22号遺跡などにみられる、自然石で径1~2メートル程度の区画をつくって祭場にしたものがこれにあたると思われ、その内部からは祭祀遺物が発見されている。石囲い施設には円形と方形とがみられるが、用法上の区別は明らかでない。かつて神籠石(こうごいし)を磐境とする説も有力であったが、現在は山城であることが明確になった。
[亀井正道]
神祭のための祭場。古代に神を迎え祭るために石囲いをした施設。「日本書紀」の天孫降臨には,天津神籬(あまつひもろぎ)と天津磐境をおこしたとの記述がある。福岡県沖ノ島遺跡などの祭祀遺跡や伊勢神宮内の石積神祠などから形態が類推されるが,小型の石で周囲を囲ったり石を積み上げたりして造った臨時の祭場で,形は円形・方形など。臨時的な施設のため磐座(いわくら)に比べて現存するものは少ない。
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…また各地の神社に降臨石・影向(ようごう)石などが残っているが,これも磐座の一種である。愛知県の尾張大国霊神社,長野県の生島足島(いくしまたるしま)神社,石川県の気多(けた)神社などには,大きな石を環状に並べた遺跡があり,磐境祭祀のなごりともいわれる。【茂木 貞純】 古書は,神をめぐる空間の構造を磐座,神籬(ひもろぎ),磐境と区別している。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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