社会法学(読み)しゃかいほうがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会法学」の意味・わかりやすい解説

社会法学
しゃかいほうがく

社会法に関する学問あるいは法社会学と同じ意味に理解されることもあるが、それと区別される場合には、アントン・メンガー、グスタフ・ラートブルフ、カール・レンナーなどによって代表されるところの、法学的方法を通して社会理想を実現しようとする法学傾向、ないし法に対する社会本位の立場確立しようとする法学志向をさす。たとえばメンガーは、法律秩序一般を一個の国民の内部に歴史的に形成される権力諸係の体系とみなし、資本主義社会における私的所有と不労所得取得に対する法学的批判から進んで、労働全収権、生存権、労働権の確立を通して社会主義への移行を展望する、一種法曹社会主義理論を主張した。社会法学は伝統的な法解釈学との対比においては、後者の個人主義的・形式主義的傾向に対して反個人主義的・実質的であり、形式論理的方法に対しては目的論的方法を特色とする。

[大江泰一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社会法学」の意味・わかりやすい解説

社会法学
しゃかいほうがく
Soziale Rechtswissenschaft

オーストリアの法学者 A.メンガーなどの法曹社会主義者に現れている法学観。法の進歩によって社会全体の福祉を達成しようとするもの。この立場は,法の厳密な論理的解釈重点をおく法解釈学と違って,社会理念をもって目的論的に法を解釈する傾向がある。

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