日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会的風土」の意味・わかりやすい解説
社会的風土
しゃかいてきふうど
social climate
社会や集団を構成する成員の間に観察される支配的な行動様式をいう。それは「家風」「校風」「社風」などのように、成員間の長期的な相互作用の結果形成される、特有な集団としての雰囲気とも考えられ、社会的雰囲気social atmosphereともよばれる。社会的風土がひとたび形成されると、それは成員たちの行動を規定し、枠づける強い作用をもつと考えられる。
社会心理学者レビンらは、リーダーシップの型と成員の行動様式との関係に注目し、権威主義、民主主義、自由主義の体制が、異なった社会生活の風土をつくる事実を検証するため、実験的に「専制」「民主制」「放任制」の集団をつくり、成員たちの行動に及ぼす効果を調べた。その結果、専制に対する成員の反応は、不満―攻撃型と、無感動―服従型に分かれ、一般に集団本位の行動、モラールmoraleに問題が現れた。民主制では対照的に、友好的・信頼的行動が多く、モラールも高かった。これに対して放任制では、集団本位の活動はきわめて低い水準であった。また社会的風土の個人に及ぼす影響をみるために、2人の児童を専制の集団と民主制の集団へ、それぞれ所属性を変える実験を行った結果、8回目の会合から著しく集団の風土の影響を受けることが検証された。これらの研究結果はまた、集団生活の改善という実践的課題にも応用されている。
[大塩俊介]
『K・レヴィン著、猪股佐登留訳『社会科学における場の理論』増補版(1979・誠信書房)』