日本大百科全書(ニッポニカ) 「ページェント」の意味・わかりやすい解説
ページェント
ぺーじぇんと
pageant
中世イギリスにおける宗教劇の上演形式の一種。正確な発音はパジャント。台本のうえからはサイクルcycle(連続劇)とよばれるもので、並列舞台(マンション)の一形式である。日本では山車(だし)、屋体(台)、車舞台などと同義に用いられることが多く、また広く野外劇や見せ物行列などをさすこともある。
13~14世紀、6月初旬の聖体節の行事の一部として各種の同業組合(ギルド)が町角や広場に繰り出した車舞台は、一般に二層からなり、上部が舞台、下部は楽屋として幕で仕切られ、同時に地獄を表していた。そうして各車舞台は普通48の場面からなるサイクルの一場面を受け持ち、次々に決まった場所に移動して、待ち構える観衆の前で演じた。上演は早朝から、まる1日を要した。20世紀初頭にイギリス各地で復活したページェントは、都市の記念行事的な一種のスペクタクル行列であり、これは日本にも影響を与えて、大正初期以来、坪内逍遙(しょうよう)を中心にいくつかの試みがなされた。とくに1922年(大正11)京都知恩院で行われた『織田信長』(総指揮小山内薫(おさないかおる)、主演2世市川左団次)は有名である。
[大島 勉]