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神経歴史学 しんけいれきしがく Neurohistory

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知恵蔵2015の解説

神経歴史学

神経生理学や認知神経科学、認知行動科学などの知見を踏まえて、人類の過去の歴史を見直し、より深く掘り下げる新しい学問。ハーバード大学の歴史学の教授であるダニエル・L.スメイル(Daniel Lord Smail)が2008年に出した本(『On Deep History and the Brain』)の中で提唱した。この学問概念に基づき、歴史学者のみならず、医学、心理学、哲学、文学など幅広い分野の研究者が集まり、アメリカドイツ、日本など世界各地でワーキンググループができて研究が始まっている。
人類の歴史を、ヒトという種が持つ集合的な特性に着目して読み解こうとする点が、これまでの歴史学にない視点である。
神経歴史学」(neurohistory)という名称の「神経」(neuro)とは、ただ単にヒトの中枢神経及び末梢神経のことを表すだけでなく、現在分かっている生理的な特性や、知覚と行為の相関など、神経の働きや脳の受容をも含む。文明の形成、技術の革新などに際し、ヒトの神経の働きはどのように影響したか。逆に、それらがヒトの神経の働きにどのような影響を与えたか。更に、ニューロンシナプスの形成、神経ネットワークの再構築による脳の可塑性(環境や刺激に順応するためにヒトの脳が生涯にわたって変化し続けること。神経可塑性と同義に使われることもある。1973年にノルウェーの神経解剖学者アルフ・ブローダルが自らの体験をもとに論文発表するまでは、ヒトの中枢神経は幼年期に完成したら損傷しても再生・回復はしないというのが長く医学界の定説であった)が、史上どのような事象によって現れ、どのようにヒトを変えてきたのか、といったことが主な研究テーマとなる。

(石川れい子  ライター / 2014年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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