種播き(読み)たねまき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「種播き」の意味・わかりやすい解説

種播き
たねまき

作物種子を畑や苗床に下ろすこと。播種(はしゅ)ともいう。種播きの方法は栽植様式の違いにより異なる。畑一面に播くばら播き(散播(さんぱ))は粗放な方式で、牧草などに用いられるが、大規模なアメリカの水田などでは航空機により散播される。散播用の機械はブロードキャスターとよばれ、高速回転板により遠心力で種を播き散らす。すじ播き(条播(じょうは))はもっとも一般的な方法で、発芽後の栽培管理にも適している。とくにうね間の狭い場合を密条播き(ドリル)という。条播機械(ドリル)には、手押し小型のものからトラクター牽引(けんいん)用の大型で一度に20条以上も播けるものまである。もっとも一般的なグレインドリルは、長いホッパーの底に一定間隔で種子の繰り出し装置があり、それに続くコールターに条切り装置、肥料・種子落下筒、および覆土・鎮圧装置がついている。ホッパーが区分されているユニットドリルは、野菜など小粒の種子用に使われる。ある幅をもって帯状に播くものは広幅播きといい、裏作ムギなどで行われる。一定の間隔に種子を何粒かずつまとめて播く方法を株播きといい、種子の数がとくに多い場合を巣播き、1、2粒のものを点播(てんぱ)という。点播機(プランター)はホッパーの底にある目皿の回転により一定間隔で種子を落とす仕掛けで、溝切り、覆土・鎮圧装置も備えている。

 普通は畑全体を耕してから種播きする整地播きであるが、耕さずに播く不整地播きや種子を播く部分だけをすこし掘る削り播きなどは粗放で原始的な農業にみられる。機械で耕うんしながら同時に種子を土に混ぜ込む全層播きという方法もある。整地・すじ播きの手順は、耕起し整地したあとに、まず作条を掘り、肥料を施して土で覆い(間土(かんど)という)、種子を播き、最後に土をかける(覆土)。覆土は種子への水分供給と、風や雨による種子の移動や鳥害を防ぐものであり、軽く鎮圧する。覆土が厚すぎる(深播き)と酸素不足で発芽不良となり、また発芽しても厚い覆土を貫くことができず出芽不良となる。

 播種量は各作物で適量がほぼ決まっているが、一般にやせ地、早生(わせ)品種の場合はやや厚播き、肥沃(ひよく)地、晩生(おくて)品種ではやや薄播きにする。厚播きにしすぎると、芽生え後過繁茂となり、光合成や養分吸収が悪く、軟弱徒長して収量が少ない。またそれを防ぐため間引きなどの労力が必要になる。種播きの時期は作物の生理の特性とその土地の気候条件とによって、また経営上の労力や収穫目的の時期や災害回避などの諸条件との兼ね合いで決められる。ムギなど秋播きの作物では、種播きの時期が収量に大きな影響を及ぼす。

 このほかに畑に数種の作物を混ぜて播くことを混播(こんぱ)といい、これに対し普通の1種類だけの種播きを単播(たんぱ)という。また発芽の失敗や鳥害などにあった部分を播き直すことを追い播きとよぶ。

[星川清親]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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