鳥類が人間に与える害を総称していう。最も大きな被害は農作物の生産場面にみられるものであるが,このほかにも航空機や列車の運行の障害,鳥の糞(ふん)による建造物の汚染や病気の媒介,あるいは鳴き声による騒音害に至るまで,その害の及ぶ範囲は広い。害鳥の種類は地域によって異なることもあるが,一般には人里にすみつく性質をもった世界共通種が多く,スズメ,ハト,カラスなどはその代表的なものといえる。ただしこれらの鳥類は,場合によって害虫を捕食したり汚物を処理するなど,益鳥として働くこともあるので,その取扱いには注意を要する。
農作物に対する鳥害は,通常二つの場面で問題とされる。その第1は播種(はしゆ)期の鳥害で,まいた種子や発芽直後の芽ばえが食害を受ける場合である。1羽のハトは1日90粒のダイズ種子を食害するといわれる。また必ずしも種子の食害にはあたらないが,鳥類が耕地土壌の微小動物を捕食する間接的な影響として,幼苗が引き抜かれたり損傷を受けることも少なくない。第2に問題となるのは結実期で,登熟中の穀類やマメ類がスズメ,ヒワ,ハトなどによって受ける食害は著しく大きい。また果樹園で成熟中の果実が,カラス,ヒヨドリ,オナガなどによって受ける食害も,近年増加しつつあるといわれる。場合によっては,特定の作物の作付けが,鳥害によって不可能となる地域もみられるほどである。
鳥害の防止軽減には,古来さまざまな方法が考案されてきているが,なお決め手となるものはない。かかしや鳴子は古くから利用されてきた方法であり,カーバイドによるアセチレンガス利用の爆音器なども広く使用されている。これらにはさらに各種の改良が試みられているが,いずれも鳥類の視覚や聴覚にうったえ,“おどし”的効果を期待するものである。近年は農薬として鳥類の忌避剤が開発されてきているが,そのあるものは種子にまぶし,その色によって鳥をおどすものであり,他のものは瓶に入れたり布にしみ込ませたりして耕地に一定間隔で設置し,異臭によって鳥を追い払うものである。防鳥網は鳥害防止に卓効を示すものであるが,大面積に利用するには経費の点で問題が残る。また特定の作物を小面積に作付けすると,鳥の集中攻撃を受けるため,熟期を等しくする作物を広い面積に作付けし,被害の分散をはかることが望ましい。
執筆者:山崎 耕宇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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