作物の苗を育てるための圃場(ほじょう)。苗床では集約的管理ができるので、幼植物を病虫害、乾燥害、低温害、雑草害などから保護でき、人工的に保温、加温したり、あるいは遮光したりして生育を調節することもできる。また遺伝的、後天的な不良個体を淘汰(とうた)できる。水稲、イグサなどのための湛水灌漑(たんすいかんがい)する苗床をとくに苗代(なわしろ)といい、花木、果樹、林木の苗木を育てる場所を苗圃(びょうほ)とよぶ。苗床にはいろいろの形式があるが、温度管理の面から露地床(ろじどこ)、冷床(れいしょう)、温床(おんしょう)に分けられる。(1)露地床は耕地の一部を苗床とし、とくに温度管理をしない。葉菜類用の苗床や苗木の苗圃などが含まれる。(2)冷床はガラス、ビニルなどで太陽熱で保温するもので、水稲の保護苗代や一般のビニルハウス、ビニルトンネル、葉菜の枠(わく)冷床などがある。(3)温床は人工加温する苗床で、堆厩肥(たいきゅうひ)を入れた醸熱温床、電熱線を敷いた電熱温床、石油やプロパンガスによる温風やスチーム、あるいは温泉熱を利用した温床などがある。床の形式は枠で囲う枠床(わくどこ)が多く、また床の高さにより地床、平床(ひらどこ)、揚(あ)げ床(どこ)などがある。最近は水稲で育苗箱が用いられ、野菜、花などでも箱播(ま)きのほか、育苗ポットでも育てる。苗床の構造には大型のガラス室、ビニルハウスからビニルトンネル、家庭用の小型のフレームまでいろいろある。
[星川清親]
畑や林地に植えつける若い植物(苗)を養成する場所。イネの苗床はとくに苗代と呼ばれる。苗床は畑よりも単位面積当りの栽植本数を多くでき,小面積でよいので,灌水や病虫害の防除などをきめ細かく行うことができる。また苗床を被覆し加温すれば,露地栽培のできない低温期に苗を育てることができ,気温が上昇したときに大きな苗を畑に移植し,収穫期を早めることも可能となる。
苗床は日当りがよく,風当りが弱く,水の便がよくて管理しやすい場所に設置するのが普通である。苗床には温床,冷床,露地床などがあり,作物の種類や育苗の時期などに応じて使い分けられる。温床は,わくを作り,有機物の発酵熱や電熱を利用して加温する苗床で,気温が低くて露地栽培のできない冬から早春に,果菜類などを育苗する場合に使用される。冷床は,わくは作るが加温しない苗床で,気温が高くなってからの果菜類の育苗や,低温でも生育にさしつかえない種類の育苗に使用される。露地床は畑の一部をそのまま利用する形態で,キャベツ,タマネギ,ネギなどの野菜類,果樹,花木,林木などの育苗に使われる。
執筆者:杉山 信男
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…育苗には作業者が管理しやすく,苗の生育に適した場所を選定し,必要な環境づくりをすることが重要である。育苗の場を苗床,苗圃(びようほ)という。水稲では苗代といい,畑作物などでは苗畑ともいう。…
※「苗床」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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